日本薬理学雑誌
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特集 シグナル分子および細胞保護因子としての硫化水素
十二指腸重炭酸イオン分泌における硫化水素の役割
林 周作竹内 孝治
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2012 年 139 巻 1 号 p. 9-12

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抄録

硫化水素(H2S)は哺乳動物の体内でL-システインからcystathionine β-synthaseやcystathionine γ-lyaseなどの産生酵素によって作られており,ガス状のシグナル分子として認識されている.近年,H2Sは神経調節物質や平滑筋弛緩因子として機能することが提案され,細胞保護,抗炎症作用や疼痛への関与など生体内において多様な役割を演じていることが明らかにされている.消化管においても例外でなく,H2Sは非ステロイド性抗炎症薬の副作用である胃傷害の発生を抑制することや,炎症性腸疾患に対して治療効果を示すことなど,保護的に働くことが報告されている.最近著者らは,H2Sが十二指腸の粘膜防御において重要な役割を担っているアルカリ(重炭酸イオン)分泌を著明に促進することを見いだした.H2Sによる十二指腸アルカリ分泌の促進作用は,内因性のプロスタグランジン,一酸化窒素およびカプサイシン感受性知覚神経を介して発現する.さらに,内因性H2Sは粘膜酸性化によって誘起されるアルカリ分泌の増大反応に関与しており,十二指腸においても粘膜保護因子として作用することが判明している.

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