日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
新規高リン血症治療薬クエン酸第二鉄水和物(リオナ® 錠 250 mg)の薬理学的特性と臨床試験成績
宮崎 章松尾 明飯田 聡夫西野 範昭前田 和男松本 裕大類 諭
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2014 年 144 巻 6 号 p. 294-304

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抄録
クエン酸第二鉄水和物(リオナ® 錠250 mg)はカルシウム(Ca)非含有リン(P)吸着薬として,透析導入前の保存期を含めた慢性腎臓病(CKD)患者の高P 血症の改善を適応とし,世界に先駆け本邦で承認された新規P 吸着薬である.正常ラットにおいて,クエン酸第二鉄水和物は糞中P 排泄量を増加させ,P 吸収量を減少させた.慢性腎不全ラットにおいては,血清P 濃度,Ca×P 積,大動脈のCa 沈着を低下させ,血清中の副甲状腺ホルモン濃度の低下により,副甲状腺過形成,骨代謝異常を軽減させた.したがって,クエン酸第二鉄水和物は,消化管でリン酸と結合してP 吸収を抑制すること,高P 血症に関連した異所性石灰化,二次性副甲状腺機能亢進症,骨代謝異常の進展を抑制することが示された.国内臨床試験では,血液透析患者対象の第Ⅱ相臨床試験において血清P 濃度低下作用に対する用量反応性が確認され,第Ⅲ相臨床試験においてセベラマー塩酸塩との非劣性が確認された.腹膜透析患者および保存期CKD 患者においても,血清P 濃度低下作用が確認された.また,保存期CKD 患者において,血清中の線維芽細胞増殖因子-23(FGF-23)濃度はプラセボ投与群に対し有意な低下を示した.安全性において主な副作用は,下痢(10.1%),便秘(3.2%),腹部不快感(2.5%),血清フェリチン増加(2.7%)であり,そのほとんどが軽度であった.本剤の投与で一部の鉄が吸収されることにより,血清フェリチン濃度やヘモグロビン濃度の上昇が認められたが,これらの変化は赤血球造血刺激因子製剤や静注鉄剤を減量しながら服薬を継続する中で定常化した.以上,本剤は透析患者および保存期CKD 患者における高P 血症に対して有効性および安全性が確認されたことから,高P 血症を呈するCKD 患者の新たな治療選択肢 として期待される.
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© 2014 公益社団法人 日本薬理学会
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