日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
新規去勢抵抗性前立腺癌治療薬アビラテロン酢酸エステル(ザイティガ®錠250 mg)の薬理学的特徴および臨床試験成績
岩田 理子堤 健一郎原田 寧
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2015 年 145 巻 5 号 p. 260-265

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抄録
アビラテロン酢酸エステルは生体内で速やかにアビラテロンへ加水分解され,アンドロゲン合成酵素であるC17,20-lyase/17α-hydroxylase(CYP17)を阻害する.アビラテロンは精巣,副腎および腫瘍組織内におけるアンドロゲン合成を阻害することにより,去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に対して抗腫瘍効果を示す.アビラテロンはヒト精巣由来CYP17を不可逆的に阻害し,ヒト副腎皮質腫瘍細胞株を用いたin vitroでの検討およびマウスに経口投与したin vivoでの検討においてアンドロゲン合成を抑制した.さらに,ヒトCRPCを模したヒト腫瘍異種移植マウスモデルにおいて,アビラテロンは腫瘍内アンドロゲン含量を低下し,腫瘍体積を縮小するとともに無増悪生存期間(PFS)を延長した.日本で実施した去勢抵抗性前立腺癌患者を対象とした臨床試験において,アビラテロン酢酸エステル(本剤)1000 mgとプレドニゾロン10 mgを併用投与したときの前立腺特異抗原(PSA)奏効率(PSA値がベースラインから50%以上低下した被験者の割合)は,化学療法未治療患者で60.4%(29/48例,90%信頼区間47.5%~72.3%),化学療法既治療患者で28.3%(13/46例,90%信頼区間17.6%~41.1%)であった.いずれの試験においても,本剤の忍容性および安全性に大きな問題は認められなかった.アビラテロン酢酸エステルは,化学療法歴の有無にかかわらず去勢抵抗性前立腺癌に使用可能な薬剤であり,新しい治療選択肢のひとつとして,社会に大きく貢献できる薬物である.
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© 2015 公益社団法人 日本薬理学会
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