日本薬理学雑誌
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特集 日本製薬企業に於けるトランスレーショナルリサーチの現状&課題
薬剤応答性モニタリングバイオマーカー:開発とその課題
水戸 誠二酒井 正樹鈴木 將之
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2016 年 148 巻 6 号 p. 302-304

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抄録

医薬品の研究開発費が増大すると共に開発難易度も上昇し,医薬品産業の生産性は大きく低下している.この課題の解決策の1つとしてバイオマーカーの活用が模索され,実際にバイオマーカー利用例は増加している.医薬品の臨床開発において適切にバイオマーカーを活用するためには,適応疾患に関する,リスク因子,発症,病態,診断,進展並びに寛解などを繋ぐ分子パスウェイを理解することが前提となる.薬剤応答性バイオマーカーを用いて,標的組織への薬剤暴露,標的分子への結合,標的下流への薬理学的作用並びに臨床エンドポイントとの関連性に関する情報を得ることは,開発初期における作用機序の証明や,次相に進むかどうかを判断するための重要な根拠となる.また,薬剤応答性バイオマーカーの反応と薬物暴露との関係は,有効用量の決定や次相の臨床試験における用量設定に重要な情報を与える.しかしながら,臨床試験にバイオマーカーを実装するにあたっては,バイオマーカーとしての適格性や測定法バリデーションなどの課題にも留意する必要がある.個々のバイオマーカーは臨床的なエビデンスに基づき,臨床適用上の適格性が異なる.一方,測定法バリデーションに関しては,“Fit for purpose”という考え方,すなわち,バイオマーカーの用途に応じて,測定法の頑健性に関する要求水準を変えるべきという考え方が一般に受け入れられている.もちろん,プロジェクトチーム内でのバイオマーカーの活用戦略の共通理解が重要なことは言うまでもない.最後に,公知情報やデータベースを活用してのバイオマーカー選定プロセスを,乾癬患者を対象とした当社開発品の臨床試験を例にして紹介する.

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© 2016 公益社団法人 日本薬理学会
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