日本薬理学雑誌
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特集:排尿障害治療薬の最新の知見~基礎・臨床研究から~
膀胱求心性神経の薬理学的機能解析
相澤 直樹
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2019 年 154 巻 5 号 p. 255-258

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抄録

膀胱は下部尿路において重要な臓器であり,蓄尿と排尿という相反する重要な役割を担っている.これらに機能障害が生じると患者のQOLは著しく害される.蓄尿機能障害の体表的疾患として,尿意切迫感を主訴とする過活動膀胱や,尿意切迫感および膀胱痛を主訴とする間質性膀胱炎(ハンナ型は2015年に指定難病)が挙げられる.また,主として排尿機能障害を呈する前立腺肥大症においては,約半数以上の患者が過活動膀胱症状を有することが報告され,膀胱出口部部分閉塞による二次的な蓄尿機能障害の存在も示唆されている.蓄尿機能障害の病態はいずれも膀胱知覚の異常亢進が考えられ,我々はこれまで,げっ歯類を用いて膀胱伸展に応答する求心性神経活動の機能解析を行い,各種薬剤の薬理特性の評価や,病態モデルを用いた膀胱知覚の変化を生理学的に検討してきた.その結果,既に過活動膀胱や前立腺肥大症の治療薬として上市されている薬剤や,今後,治療薬候補となり得る薬剤の多くが膀胱知覚に作用することを明らかにしてきた.また,前立腺肥大症のモデル動物である膀胱出口部部分閉塞のラットモデルを検討した結果,筋原性由来の膀胱微小収縮の増大に伴って,膀胱求心性神経の活動が間歇的に増減していることを見出し,前立腺肥大症に伴う過活動膀胱における尿意切迫感の発生機序解明に寄与する可能性を示した.

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