2020 年 155 巻 5 号 p. 332-339
テジゾリドは,新規オキサゾリジノン系抗菌薬であり,細菌のリボソームに作用して翻訳開始反応を抑制するタンパク質合成阻害薬である.テジゾリドリン酸エステルはテジゾリドのプロドラッグであり,投与後に生体内のホスファターゼによって速やかに活性本体のテジゾリドに変換される.テジゾリドは,主にグラム陽性菌に対して抗菌活性を示し,同じオキサゾリジノン系抗菌薬のリネゾリドと比較して,概して4~8倍強いin vitro抗菌活性を示す.Staphylococcus aureus(S. aureus)に対するテジゾリドの抗菌活性はメチシリン耐性,感性にかかわらず同様であり,90%最小発育阻止濃度(MIC90)は0.25~0.5 μg/mLであった.テジゾリドの抗菌活性はリネゾリド耐性S. aureus(LRSA)に対して全般的に低下するが,cfr遺伝子によりリネゾリド耐性となったLRSAに対しては良好な抗菌活性を示す.構造活性相関解析により,テジゾリドのC-5位ヒドロキシメチル基,C環ピリジン及びD環テトラゾール基が,テジゾリドの抗菌活性増強やcfr遺伝子によるリネゾリド耐性菌への抗菌活性に関連すると考えられている.テジゾリドに対する自然発生耐性変異頻度は低く,リネゾリドの約1/16倍である.テジゾリドの有効性に最も関連する薬物動態/薬力学(PK/PD)パラメータは非結合型薬物濃度-時間曲線下面積/最小発育阻止濃度(fAUC/MIC)であり,免疫能正常状態で静菌に必要なfAUC/MICは3と算出された.テジゾリドリン酸エステルの第Ⅲ相臨床試験が国内外で実施され,メチシリン耐性S. aureus(MRSA)を含むグラム陽性菌に起因する皮膚・軟部組織感染症患者に対するテジゾリドの有効性及び安全性が示された.