我が国を含め,世界的に気管支喘息やアレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患罹患率が増大している.その治療は対症療法薬に頼るところが大きく,今日までのところ根治療法は確立されていない.これら疾患の根底にはアレルギー標的臓器・組織の過敏性が存在し,例えば喘息患者では気道過敏性が問題となり,わずかな刺激でも過剰な気道狭窄をもたらし,喘息死の原因となる.一方,喘息発作にshort-acting β2 agonistなどのいわゆる気管支拡張薬が著効を示し,発作時の気道狭窄における気管支平滑筋過剰収縮の深い関与が示唆される.気管支平滑筋はmuscarinic M3 receptorの刺激により収縮し,喘息時にはその収縮反応が著明に増強されている.この時,M3 receptor発現量やacetylcholine刺激による細胞質Ca2+濃度上昇は正常レベルであり,さらにhigh K+脱分極刺激等の受容体を介さない収縮も正常レベルで,すなわちCa2+を介するいわゆる古典的な収縮機構については喘息時でも異常は認められない.一方,平滑筋収縮時のCa2+ sensitization現象が知られるようになり,特にsmall GTPase RhoAおよびその下流Rho-kinaseを介する細胞内シグナルと過敏性形成との関連性が注目されてきた.我々はこれまでに,喘息時の過敏性気管支平滑筋においてRhoA発現が増加しており,その発現増加にmicroRNA(miRNA)による翻訳調節機構の減弱を明らかにしている.さらに近年,long non-coding RNA(lncRNA)によるmiRNA発現調節も知られるようになってきた.本稿では,これらnon-coding RNAsによるRhoA発現調節機構を紹介し,気道過敏性を抑制するような新たな喘息治療薬開発の可能性について述べる.