日本薬理学雑誌
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特集:基礎研究の臨床応用とアカデミア創薬への新規展開
IL-19の抗炎症作用を活かした治療への応用
小野 尚重東 泰孝
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2021 年 156 巻 5 号 p. 288-291

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抄録

インターロイキン19(IL-19)は,IL-10ファミリーの一員であり,主にマクロファージや単球,上皮細胞,血管平滑筋細胞によって産生されるサイトカインであり,さらに多くの細胞種からも産生される.産生する細胞が多岐に渡るため,IL-19の役割も多面的であるが,主な役割の一つとして,1型ヘルパーT細胞(Th1)を介する免疫応答およびTh2を介する免疫応答の両方に関与するユニークな働きを持つサイトカインである.この作用も免疫系細胞と非免疫系細胞の両方からIL-19が産生される事実と関連している.IL-19の受容体はIL-20受容体1および2から成るヘテロ二量体であり,IL-10ファミリーの他のメンバーであるIL-20およびIL-24と受容体をシェアする.2000年に発見されたIL-19であるが,当初10年ほどの研究成果により,乾癬などの皮膚疾患,喘息などの呼吸器疾患,ならびに動脈硬化症などの循環器疾患などを中心に人疾患あるいはマウスモデルにおける抗炎症的役割が解明された.2013年ごろからは,マウス疾患モデルにおけるIL-19の治療的役割に関する研究報告が相次ぐようになり,IL-19の応用展開に注目が集まる.本総説では,動脈硬化症モデルマウスを用いたIL-19の予防的効果ならびに治療的効果に関する研究成果を紹介し,人疾患への応用展開を視野に入れつつあるIL-19の最新研究動向について述べる.

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