日本薬理学雑誌
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特集:薬理学における動物実験代替法の新たなる技術展開
日本における動物実験代替法の歴史ならびに動向
秋田 正治吉山 友二
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2022 年 157 巻 5 号 p. 326-329

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抄録

19世紀の後半から,実験動物は科学研究にとても多く使用されてきた.特に1890年代に実験動物であるWistarラットが誕生して以降,様々な実験動物が開発され,実験動物は人間のために偉大な貢献を収めてきた.いわば我々は実験動物により,豊かに生き延びてきたと言っても過言ではない.しかし,この実験動物の使用数は1990年代をピークに少しずつ減少してきている.その理由の一つに,動物実験代替法の存在が挙げられる.1980年前後から動物実験代替法の重要性を唱える声が高まり,動物を使用しない実験へと世界中で舵が切られてきたためである.動物実験はコストや時間がかかることも大きな原因であることは相違ないが,実験動物をむやみに使用することに対する懸念が最大の原因であることは紛れもない事実である.人間の命を守るために,他の動物の命を犠牲にしてよいのかという強い疑念を多くの人間が抱き始めたためである.人類は,生きるための手段として狩猟や動物を家畜化して生きてきが,これは生き延びるための手段であった.現代の人間は,人間のことのみを考えるのではなく,地球全体の生命のことを考えた上で,人間が生きる手段を見つけていこうとしている.その生きる手段として,動物実験代替法の意義はとても大きく,今後さらに重視されていくこととなるであろう.本稿では,この動物実験代替法における日本の歴史および動向について概説する.

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