日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集 認知症発症の原因を探る新たな切り口:他疾患と新規分子標的からのアプローチ
血球と血漿成分に着目した認知症研究
中澤 俊達小川 凛久佐々木 拓哉有村 奈利子
著者情報
ジャーナル 認証あり HTML

2025 年 160 巻 5 号 p. 314-317

詳細
抄録

高齢化が進む日本において認知症の患者数は急激に増加しており,重大な社会問題の一つになっている.認知症は,様々な原因疾患に起因し,後天的な脳の障害により正常であった認知機能が持続的に低下し,日常生活や社会生活に支障を来す状態を指す.現在,これらの神経変性を伴う認知症の治療においては医学的介入による根治は難しい状況にある.近年,認知症の基礎研究の進歩は目覚ましく,脳機能低下に関与する血球や血漿成分に関する研究が大きく進展している.特に,認知症初期症状として血液脳関門の変化やサイトカイン等による脳内及び血中の免疫細胞の活性化などが報告されている.また,加齢や生活習慣病を含む様々な疾患が認知症の危険因子として報告されている.特に,21番染色体の三倍体化に起因するダウン症候群では,若年性アルツハイマー病の発症率が高いため,認知症の病因やメカニズムを解明する糸口として,ダウン症候群における発症機構に注目が集まっている.本稿では,認知機能の低下に関与する血液脳関門や血球・血漿成分,及び認知症の危険因子について,最新の基礎研究の知見をまとめた.

著者関連情報
© 2025 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top