日本薬理学雑誌
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新規TRH類縁体,(-)-N-[(S)-hexahydro-1-methyl-2,6-dioxo-4-pyrimidinylcarbonyl]-L-histidyl-L-prolinamideのラット血中ホルモン濃度に及ぼす影響
森安 眞津子那須 昌弘本田 日出男坂本 珠美山村 道夫松岡 雄三
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1996 年 107 巻 6 号 p. 285-297

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抄録
新規thyrotropin-releasinghormone(TRH)類縁体(-)-N-[(S)-hexahydro-1-methyl-2,6-dioxo-4-pyrimidinylcarbonyl]-L-histidy1-L-pmlinamide(TA-0910)の内分泌系に及ぼす影響を雌雄ラットを用い,静脈内投与あるいは経ロ投与後の血漿下垂体ホルモン(thyroid-stimulating hormone: TSH, prolactin:PRL)および甲状腺ホルモン(triiodothyronine: T3, thyroxine: T4)濃度を指標に,TRHのそれと比較検討した.血漿TSHはTA-0910静脈内投与(8.3nmol/body)ならびに経ロ投与(0.275, 2.75μmol/body)後,雄,雌共に速やかに上昇し,静脈内投与では投与10分以内に,経ロ投与では投与30分以内に最高濃度に達した.その濃度は対照群レベルの静脈内投与で5~7倍,経ロ投与の低用量で2~3倍,高用量で5~6倍であった.以後,血漿TSHは急速に低下し,静脈内投与では投与2時間後,経ロ投与では投与3~6時間後に雄,雌共対照群レベルまで低下した.血漿T3は両投与経路共にTSHより明らかに遅れて上昇し,静脈内投与では投与1~2時間後,経ロ投与では投与2~3時間後に最高濃度となった後減少した,静脈内投与では血漿T4の上昇はT3の上昇とほぼ同様のパターンで変動したが,血中からの消失はT3より遅かった.TA-0910経ロ投与後のT3,T4上昇はTSHのそれに比較し高用量群と低用量群の差異は小さかった.TRHの静脈内投与(0.83nmo1/body)および経ロ投与(0.275μmo1/body)ではそれぞれ10倍量のTA-0910投与時と比較し,雄,雌共やや低いTSHの推移,静脈内投与の雄で軽度高いT3,T4の推移,経ロ投与の雌,雄でT4の消失が早かった以外,ほぼ同様の血漿TSH,T3,T4の推移が認められた.両薬物投与による血漿PRL濃度の有意な変動は個体差が大きく認められなかった.以上,TA-0910のホルモン分泌促進作用は雌雄ラットにおいてTRHのそれと質的に変わらなかったが,効力的にはTRHのそれの約1/10~1/5の強さであることが示唆された.
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