日本薬理学雑誌
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麻酔イヌにおける塩酸エホニジピンの心筋酸素需給バランスにおよぼす効果
藤倉 直樹横山 達朗増田 幸則鹿田 謙一田中 作彌
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1996 年 108 巻 2 号 p. 39-48

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抄録

麻酔開胸イヌを用いて,ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の塩酸エホニジピンの心筋酸素需給バランスにおよぼす効果をニフェジピンおよびニソルジピンと比較検討した.麻酔開胸イヌにおいて塩酸エホニジピン(30μg/kg)はニフェジピン(3μg/kg)およびニソルジピン(3μg/kg)と同程度平均血圧を低下させたが,その降圧効果はニフェジピンおよびニソルジピンよりも持続的であった.そのとき心拍数は塩酸エホニジピンおよびニソルジピンにより減少したのに対しニフェジピンでは逆に増加した.心筋酸素消費量は塩酸エホニジピン(30μg/kg)により投与初期に軽度増加したが,その後は有意な変化は認められず一過性の反応であった.一方,ニフェジピン(1および3μg/kg)では投与直後に有意な増加が認められたのに対しニソルジピン(3μg/kg)では有意な変化は認められなかった.しかし塩酸エホ=ジピン,ニフェジピンおよびニソルジピンはともに冠状静脈洞血流量を増加させ動静脈酸素濃度較差を減少させたことより,これらの薬剤はともに心筋への酸素供給を増加させることが示唆された.また塩酸エホニジピン,ニフェジピンおよびニソルジピンによりダブルプロダクトが減少したことより,これらの薬剤は心筋の酸素需要を減少させることが示唆された.以上の結果から,塩酸エホニジピンは心筋酸素消費量を一過性に増加させたが,持続的な酸素供給増加作用および持続的な酸素需要減少作用を示したことより,心筋酸素需給バランスを改善する可能性が示唆された.

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