日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
塩酸ピルジカイニド注射剤およびジソピラミド注射剤のイヌ冠動脈二段結紮不整脈モデルにおける抗不整脈作用と麻酔イヌにおける心機能,心電図に及ぼす影響
日高 寿範井上 貴仁小森谷 和美林 友二郎猪俣 則夫
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 115 巻 5 号 p. 295-308

詳細
抄録

塩酸ピルジカイニド注射剤の抗不整脈作用と心機能,心電図に対する影響について,臨床用法と同様に10分間で持続静注する投与方法でジソピラミド注射剤の作用と比較検討した.イヌ冠動脈二段結紮不整脈モデルにおいて,塩酸ピルジカイニド(1.25,2.5,5mg/kg)は,用量依存的に不整脈比{=(心室性不整脈数/全心拍数)×100}を減少させ,2.5mg/kg以上で不整脈比は50%以上減少した.一方,ジソピラミド(2.5,5mg/kg)も用量依存的な抗不整脈作用を示し,5mg/kgで不整脈比は50%以上減少した.抗不整脈作用は塩酸ピルジカイニドの方が低用量で発現したが,両薬物の有効血漿中濃度は3∼8μg/mlと同程度であった.麻酔イヌにおいて,塩酸ピルジカイニド(1.25,2.5,5mg/kg)およびジソピラミド(1.25,2.5,5mg/kg)は,左心室内圧最大上昇速度((+)-LV dP/dt max)および左心室内圧最大下降速度((-)-LV dP/dt max)を用量依存的に抑制したが,その作用はジソピラミドの方が顕著であった.しかしながら,血漿中濃度で比較した場合,両薬物の心機能に対する抑制作用は同程度であった.心電図に対して,塩酸ピルジカイニドはPQ間隔を延長させたが,ジソピラミドはほとんど変化させなかった.また,両薬物ともにQRS幅およびQTcを,血漿中濃度に依存して延長させたが,ジソピラミドのQTc延長作用は,より低い血漿中濃度で発現した.以上の結果より,塩酸ピルジカイニドは注射剤としてジソピラミド注射剤と同等以上の有用性を示すことが期待された.

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事
feedback
Top