日本薬理学雑誌
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異型化赤血球誘発ラット脳梗塞に対するLisurideの影響
宮澤 友明村山 千恵中川 英彦
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1991 年 98 巻 6 号 p. 449-456

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抄録

麦角アルカロイド誘導体lisurideの異型化赤血球誘発ラット脳梗塞に対する影響を検討した.生理食塩液で2倍希釈したラット自家血を高浸透圧性溶液(65% meglumine diatrizoate)と等量混合し,高浸透圧処理で形態変化および変形能低下を引き起こした異型化赤血球を含む混合液50μを,ラット左外頸動脈から逆行性に内頸動脈に注入して脳梗塞を誘発した.lisurideおよび対照として生理食塩液を,梗塞誘発30分前に皮下投与した.生理食塩液群では,脳梗塞誘発2時間以内にすべてのラットが死亡したが,lisuride0.002mg/kg群では生存時間の延長傾向が,0.01mg/kg群では有意な延長がみられた.脳梗塞誘発1時間後に,脳水分含量率,脳組織中Na+およびCa2+含量がそれぞれ増加したが,lisuride0.01mg/kg群では生理食塩液群に比していずれも有意な減少がみられた.梗塞誘発1時間後の別の脳から作成したヘマトキシリンエオシン染色標本について,組織障害に対する影響を検討したところ,lisuride0.01mg/kg群では組織障害の顕著な領域が生理食塩液群に比して約50%と有意に小さかった.またlisuride群では,大脳皮質および髄質神経細胞と髄質神経線維の変性が生理食塩液群に比してそれぞれ有意に軽減された.以上の結果から,lisurideは脳循環障害後の急性変化に対して有効であることが示唆された.

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