抄録
ラット海馬神経細胞は、培養皿上で複雑なネットワーク構造を再構成し、相互作用して自発的な活動電位を発現する。我々は64個の微小平面電極から活動電位を計測し、これを解析している。我々は神経回路網と外界を相互作用させるインタフェイスとしてKheperaIIロボットを用い、神経回路網がロボットの動作を制御し、またロボットのセンサ情報が神経回路網に伝達される系を構築した。外界と神経細胞のリンクは学習型ファジィ推論によって、衝突回避行動を埋め込み、実際に、ロボットに平行に設置した2面の壁に衝突することなくその間をジグザグ走行させることに成功した。外界からの入力信号に対する神経細胞の活動電位スパイク頻度はばらつきがあるが、衝突回避走行の後半では、この頻度の標準偏差が、記録された複数の神経細胞間で比較的近い値に収束していく現象が観察された。この現象は神経回路網が短期的な教師無し学習を実現した可能性がある。