抄録
Bala and Goyal (2000) はネットワーク形成に関する数理モデルを構築し,周辺支援スター型ネットワークが狭義ナッシュ均衡であることを示した.これに対して,Berninghaus et al. (2007) 被験者実験を行っており,周辺支援スター型ネットワークが形成されたが,均衡が形成された後,一部のプレイヤーの戦略変更によって均衡から逸脱するようなネットワーク形成過程が観測された.特に,ナッシュ均衡が一度形成された後,複数のプレイヤーの均衡戦略からの逸脱によりスター型ネットワークの中心プレイヤーが入れ替わるようなネットワークの形成過程が観測された.この理由の1つとして,人間の意思決定が必ずしも合理的ではなく,試行錯誤的であることが考えられる.このため,本論文ではこのような人間の意思決定構造を模倣することのできるエージェントベースシミュレーションシステムを用いた分析を行い,被験者実験において狭義ナッシュ均衡から逸脱した原因を探る.