抄録
X線電子分光法XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)は物質の表面近傍の組成の評価などを行うために材料開発によく用いられる手法で,近年では有機物や生体分子の解析にも応用されている.本研究ではこの光電子スペクトルの詳細・高精度解析のための理論的手段として量子化学計算とファジィ推論を用いた新たな手法を提案し,よく知られた数十の有機分子の内殻電子スペクトルについて適用し,手法の有効性を検討した.有機分子や生体分子の解析に重要である含炭素分子15種のスペクトルに対して適用したところ,従来法に対して13種について精度よく記述ができた.