日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集
第34回ファジィシステムシンポジウム
セッションID: MC2-3
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論文集
階層性を持った連続ボタン押しタスクにおけるボタン押し順序の切り替えがタスクに与える影響と脳波との相関
木村 大輝戎井 康平*工藤 卓
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キーワード: 運動スキル, 階層構造, 脳波
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抄録

運動スキルの習得には個人差があり,効率的な学習のためには運動学習に対する個性を理解することが有効である.例えば,反復学習による運動スキル習得が早いが精度が低い人も居れば,運動スキル習得は遅いが,運動習得後の精度は良い人もいるだろう.これまでに運動スキルの学習前後で活性化する脳領域が異なるという報告があり,学習成立前後で脳活動が切り替わっていることが考えられる.故に運動の習得の速さと精度は脳活動モードの切り替えが関連すると考えられる. そこで,本研究では脳活動の切り替えと運動スキルの精度との関係性を明確にするために,階層的なボタンスイッチのスキル学習をデザインした.特定の順序で3つのボタンを連続して押すタスクを一つのブロックとして,2つのブロックを順に実行する階層的なボタン押しタスクを実験参加者に学習して貰った. 十分な学習の後,ブロック内のボタン押し順序は変更せずに,ブロックの順序を入れ替えてボタン押し運動を行って貰った.多くの実験参加者は,上階層であるブロックの順序を入れ替えることで,ブロック間の動作実行時間が増加するのみならず,ブロック内のボタン押しにかかる時間が増加した.ブロック内のボタン押し順序が同じであるにもかかわらず,ブロック内のボタン押し時間が増加したのは,無意識に運動を行う脳活動のモードが,意識的に運動を制御するモードへ切り替わっていることを示している可能性がある.他方で上階層であるブロック間の運動時間のみ増加した実験参加者や,どちらの階層においても運動の速度低下が観察されなかった実験参加者も存在した.いずれの場合も運動にかかる時間の増加に伴って前頭前野でのEEGパワーの上昇が観察された. これらの結果は,階層的な運動スキルの習得において,多くの人は階層間の運動記憶が強く分離しておらず,上位階層のパターンの学習必要性が生じると下位階層から再度学習を行おうとする傾向かあると解釈できる.

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© 2018 日本知能情報ファジィ学会
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