2010 年 22 巻 2 号 p. 92-97
非症候群性の両側下顎関節突起形成不全症例はきわめてまれである。本症例は13歳,女子,出っ歯と下顎の後退を主訴として来院した。最大開口量は40mm,オーバージェット12.5mm,オーバーバイト2mm,歯数の問題は認められなかった。パノラマX線像より両側下顎関節突起の重度な形成不全が認められた。側面頭部X線規格写真から顕著な下顎の後退が認められた。咽頭部形態の異常は認めず,嚥下機能については誤嚥や咽頭残留などの障害は認めなかった。下顎関節突起形成不全による不規則な下顎運動が観察された。咀嚼筋活動において著しい左右差は認められず,十分な咬筋活動,咬合力が観察された。前歯部における咬合接触は認められないものの下顎頭部の形態的特徴は機能的適応によって代償されている様相がうかがわれた。