日本顎関節学会雑誌
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依頼論文
  • 津田 誠
    2019 年 31 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 2019/04/20
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー

    神経障害性疼痛のメカニズムに関する研究は,神経の障害が原因で発症する慢性疼痛であることから,神経細胞での変化が主に注目されてきた。一方で近年,脊髄後角のグリア細胞(ミクログリアとアストロサイト)が神経障害性疼痛に重要な役割を担っていることが,分子細胞メカニズムを含めて徐々に明らかになってきた。脊髄後角グリア細胞は神経損傷に応答し,さまざまな機能分子の発現を介して活性化状態となる。それらグリア細胞の活動を抑制することで,神経損傷に伴う脊髄後角神経の機能異常および疼痛の発症維持が抑制されることから,グリア細胞は神経障害性疼痛メカニズムを理解するうえで重要な細胞であり,鎮痛薬開発への有力なターゲットであると考えられる。本稿では,脊髄後角における感覚情報処理とグリア細胞の役割に関する最近の知見について紹介する。

原著
  • 鈴木 麻由, 小倉 直美, 矢野 照雄, 髙橋 康輔, 山﨑 文惠, 渡邊 駿, 石上 大輔, 清水 一, 伊藤 耕, 近藤 壽郎
    2019 年 31 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2019/04/20
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー

    目的:細胞外基質の分解産物が慢性炎症の病態形成に関与することが報告されてきている。フィブロネクチンは代表的な細胞外基質であり,細胞外基質分解酵素によって分解されたフィブロネクチンフラグメント(FN-Fs)が,関節炎の増悪に関与することが報告されている。本研究では,顎関節炎症病態へのFN-Fsの影響を調べることを目的として,培養ヒト顎関節滑膜細胞(滑膜細胞)に30 kDa FN-Fを作用させ,Monocyte chemotactic protein(MCP)の遺伝子発現およびタンパク質産生について検討した。

    顎関節内障(顎関節円板転位障害)患者滑膜から得た滑膜細胞にFN-Fを作用させたところ,MCP-1およびMCP-3遺伝子発現は刺激後6時間で,MCP-2は刺激後24時間で有意に発現上昇した。滑膜細胞培養液のMCP-1のタンパク質量は,FN-F作用後24および48時間で有意に上昇した。シグナル伝達経路の検討を目的に,各阻害剤を作用させたところ,MCP-1産生はNF-κB阻害剤によって有意に減少した。

    30 kDa FN-Fは,滑膜細胞のNF-κBを活性化して,モノサイト/マクロファージの遊走および活性化を誘導するMCP-1産生を上昇させることが明らかになった。よって,30 kDa FN-Fは顎関節の炎症病態を亢進させる可能性が示唆された。

  • 檀上 敦, 覚道 健治, 久保田 英朗, 矢谷 博文, 築山 能大, 有馬 太郎, 松香 芳三, 山下 佳雄
    2019 年 31 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 2019/04/20
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー

    日本顎関節学会は,2013年に顎関節症の病態分類をDiagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders(DC/TMD)に則して改訂した。改訂後約3年が経過したところで,全国の153の研修施設に対して本病態分類の導入状況と施行に関する調査を行った。調査内容は顎関節症の病態分類(2013年)の導入状況,診断方法,重複診断の採用,重複診断の際の治療優先度,臨床統計実施の有無,顎関節症の病態分類(2013年)の有用性,学生および研修医教育への有用性の8項目である。その結果,87%の施設で本病態分類を使用していた。診断方法は73%の施設で本病態分類を,DC/TMDに準拠している施設は13%であった。88%の施設で重複診断が採用され,その際の治療優先度は関節痛や筋肉痛に優先度をおいている施設が多かった。顎関節症の病態分類(2013年)に関して23%の施設が診断に「とても有用」,67%が「やや有用」と回答した。また,76%の施設で学生および研修医の教育に利用しているとの回答を得た。以上の結果から,顎関節症の病態分類(2013年)と重複診断は,その有用性から広く普及しつつあるが,今後治療優先度の指針の提示,画像診断などを盛り込んだ日本版DC/TMDの作成などが課題だと考える。

症例報告
  • 堀 慧, 永田 和裕, 横江 朋子, 渥美 陽二郎, 永井 渉, 坂井 大
    2019 年 31 巻 1 号 p. 24-31
    発行日: 2019/04/20
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー

    進行性の下顎頭吸収あるいは特発性の下顎頭吸収は,外傷などの明確な原因を有さず,下顎の後方偏位や前歯の開咬につながる進行性の下顎頭吸収が生じる疾患である。本論文では,顎関節治療後に短期間に発症・進行した下顎頭吸収症例の経過と治療について報告する。

    患者は43歳女性で,前方歯の開咬と咀嚼障害を主訴にあごの関節・歯ぎしり外来に来院した。既往歴で3年前に当科にて開口障害の主訴で顎関節症の治療を行っている。MRI検査では,明確な左右の下顎頭のerosionを伴う関節突起の短縮が確認され,短期間かつ顕著な吸収を認めたことから進行性の下顎頭吸収と診断した。

    本症例では一次治療として,咬合の安定化を目的としたスタビリゼーションスプリント療法と,顎機能の改善を目的とした自律運動練習や習癖指導を行い,下顎頭の吸収が安定した後に理想的な咬合関係を確立するため,外科矯正や全顎の補綴治療による二次治療を行うことを計画した。しかし,一次治療後に患者が許容する咬合の改善が得られたことから,早期接触の除去を目的とした咬合調整と智歯抜歯を追加したうえで,二次治療を行わず治療終了とした。

    進行性の下顎頭吸収の治療経過に関するデータは十分でなく,本病態に対する明確な治療方針は明らかにされていないが,本症例のように外科矯正治療を行わずに,機能的・審美的な改善が得られる場合があるなら,保存的な治療を優先することも考慮すべきと考える。

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