日本顎関節学会雑誌
Online ISSN : 1884-4308
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依頼論文
  • 黒瀬 雅之, 岡本 圭一郎
    2019 年 31 巻 3 号 p. 149-158
    発行日: 2019/12/20
    公開日: 2019/12/21
    ジャーナル フリー

    顎関節痛を含めた口腔顔面痛は,難治であることから治療が長期にわたることが多く,患者も長く続く疼痛にQOLが損なわれている。慢性疼痛は,長く続く急性痛ではない。実際,急性疼痛を誘発する咀嚼筋・顎関節部の炎症や損傷などの器質的障害が除去されても疼痛は継続し,NSAIDsの効果が限局的または効果の減弱がみられる一方で,抗うつ・抗てんかん薬が有効である背景からも,痛みの長期化や増悪には,末梢組織の器質的変化以上になんらかの中枢性の活動変化:可塑性変化が要因となっている。顎顔面領域での侵害受容ネットワークにおいて,感覚神経からの上行路の起始核であり,下行性疼痛制御系を介して下行性に感度調節を受ける延髄後角部(三叉神経脊髄路核尾側亜核から上部頸髄)の侵害受容ニューロンの興奮性は,主観的な痛みの強度とリンクしている。現在までの基礎・臨床の両面の研究から,外因性・内因性のさまざまなシグナルは,脳内の可塑性変化を引き起こし,結果として生じる延髄後角部の侵害受容ニューロンの興奮性の増強が,慢性疼痛の背景とされている。そこで,本稿では,慢性痛を急性痛の連続ではなく,脳内の侵害情報に対する応答機構の破綻によって生じる障害として捉え,脳内の侵害情報に対する応答機構のうち,侵害受容ニューロンの活動性を直接調節する下行性疼痛制御系に着目し,正常時・病態時と分けてわれわれの研究結果を基に考察を加えていく。

症例報告
  • 中岡 一敏, 齋藤 知之, 山田 秀典, 重松 宏昭, 仲宗根 康成, 石塚 忠利, 江口 貴紀, 濱田 良樹
    2019 年 31 巻 3 号 p. 159-163
    発行日: 2019/12/20
    公開日: 2019/12/21
    ジャーナル フリー

    顎関節に発生した滑膜性骨軟骨腫症を伴ったピロリン酸カルシウム(CPPD)結晶沈着症の1例を経験したので報告する。患者は68歳女性で,右側顎関節部の疼痛と開口障害を主訴に来院した。初診時,右側顎関節部の皮下に骨様硬の腫瘤を触知し開口時の疼痛を認めた。患者は約30年前から右側顎関節部に反復性の疼痛と腫脹を自覚していた。臨床所見と画像所見より,右側顎関節腫瘤型CPPD結晶沈着症を疑い,全身麻酔下に腫瘍摘出術を施行した。病理組織学的検索の結果,滑膜性骨軟骨腫症とCPPD結晶の併存との診断を得た。本症例ではCPPD結晶沈着症が先行し,その炎症反応によって滑膜性骨軟骨腫症が誘発されたものと考えられた。術後8年を経過した時点で再発を示唆する所見は認められなかった。

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