抄録
アメリカ口腔顔面痛学会(AAOP)は2013年4月に,口腔顔面痛の評価,診断および管理に関するガイドライン(AAOPガイドライン)第5版を公表した。そのなかのTemporomandibular disorders(TMD)診断基準の箇所に,当時未公表でありその後2014年初頭に公表されたDiagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders(DC/TMD)とExpanded TMD Taxonomy(拡大TMD分類)が収載された。DC/TMDは妥当性と信頼性の検証に基づくTMDの診断基準であり,頻度の高いTMDのみをカバーしている。一方,拡大TMD分類はエキスパートのコンセンサスに基づくTMD分類であり,TMDを広くカバーしている。いずれも,国際歯科研究学会(IADR)の国際RDC/TMDコンソーシアムネットワークと国際疼痛学会の口腔顔面痛スペシャルインタレストグループとの共同作業でとりまとめられたものである。AAOPガイドライン第5版が公表されるまでは,臨床医が的確に診断するためのTMDの診断基準を提供するAAOPガイドラインと,1992年に公表された科学的な妥当性の検証に基づくResearch Diagnostic Criteria for Temporomanidibular Disorders(RDC/TMD)の2つの診断基準が存在していた。2012年にAAOP評議会がDC/TMDと拡大TMD分類の採用を決定したことで,TMDの診断基準が統一される運びとなった。これにより,TMDの診断基準に関して共通の道具が提供され,異なる研究間の患者集団の比較や多施設による大規模研究の遂行が容易になり,診療の場で使われる概念的な枠組みをさらに発展させる効果も期待できる。また,この国際標準の診断基準は,新しい知見と理解の向上に基づいて今後も修正されていくとの認識である。