2017 年 29 巻 2 号 p. 92-99
顎関節症の寄与因子として,身体的因子に加えて心理・精神的因子が考えられる。しかし,顎関節症における心理・精神的因子は身体的因子と比較して客観的な評価を得づらく,いまだ不明な点が多い。そこで本研究は心理・精神的因子の一つである自我状態が,顎関節症の病悩期間にどのように影響を及ぼしているか検討することを目的とした。対象は2010年の1年間に新潟大学医歯学総合病院顎関節治療部を新規受診した患者とし,対象患者236名(女性:174名,男性:62名)にエゴグラムチェックリスト(ECL)を用いエゴグラムを作成し,自我状態について分析した。患者は専門医3名により,顎関節症の症型分類(日本顎関節学会2001年改訂版)を用いて診断した。患者のエゴグラムのCP/NP様式,FC/AC様式,年齢,性,症型分類について,顎関節症患者の病悩期間にどのように影響を与えているか比較検討した。統計学的解析はロジスティック回帰分析を用いた。統計学的有意差は有意水準を5%とした。その結果,自己否定および交流回避を特徴とする自我状態を示すFC<ACである患者,性別が女性である患者は,6か月以上の病悩期間に有意に影響を与えていることが明らかになった。