日本顎関節学会雑誌
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原著
非復位性顎関節円板障害に対する運動療法の即時効果に関する検討
山口 賀大佐久間 重光田口 慧小木 信美小林 里奈栗田 賢一田口 望
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2018 年 30 巻 2 号 p. 195-201

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抄録

顎関節症の初期治療法については可逆的な保存的治療法が推奨されており,なかでも運動療法は近年その注目度が増している。運動療法は他部位の関節障害において標準的な治療のなかに含まれ,その有用性も確立されている。しかし,顎関節については報告数が少ないため,エビデンスを確立するまでにはいたっていない。早期から疼痛軽減対策を行うことは,病悩期間の短縮,慢性痛への移行を防ぐための一助になると考える。本研究では,非復位性顎関節円板障害症例に対して顎関節可動化療法を施術した際の即時効果ついて検討したので報告する。パノラマエックス線診断および臨床診断により非復位性顎関節円板障害を伴う顎関節症と診断された患者のうち,顎関節機能障害度分類により中等度以上の障害を認めた28名に対して,初診時に顎関節可動化療法を施術した。臨床症状として,施術前後の無痛最大開口域,開閉口時痛のVASを測定し,Wilcoxsonの符号付き順位検定により効果の有無を判定した(p<0.05)。その結果,無痛最大開口域は28.8±4.8 mmから39.0±6.0 mmに増加した。開閉口時痛VASは48.3±24.1から31.6±23.2に減少し,無痛最大開口域および開閉口時痛は,統計学的に有意差を認める結果となった。したがって,顎関節可動化療法は,非復位性関節円板転位に伴う諸症状を即時的に軽減する有効な保存的治療法の一つであることが示唆された。

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© 2018 一般社団法人 日本顎関節学会
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