日本顎関節学会雑誌
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症例報告
咬合不全を伴った重度変形性顎関節症症例
細木 真紀西川 啓介前田 直樹細木 秀彦松香 芳三
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2018 年 30 巻 3 号 p. 261-265

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抄録

患者は68歳の女性であり,初診約10年前に自律神経失調症の診断を受けた。同時期より頸部の違和感のために週2回程度,カイロプラクティックで施術を受けていた。4~5年前から嚙みにくさを自覚し,右側で嚙めなくなったため,2013年に開業歯科医で下顎右側臼歯部に暫間被覆冠が装着された。経過観察されていたが,右側臼歯部の離開が進むため,2015年に徳島大学病院に紹介された。臨床所見としては,左側顎関節雑音を認め,開口制限や頭頸部の圧痛は認めなかった。パノラマエックス線写真では,両側下顎頭の吸収と下顎枝の短縮を認め,CT画像では両側下顎頭と下顎窩の著しい形態異常を認めた。かかりつけ内科の検査ではリウマトイド因子は陰性で,本院整形外科においても軽度頸椎症の診断であった。両側変形性顎関節症と診断し,スタビライゼーション型スプリントを装着し,経過観察後,歯冠修復を行った。本症例ではスプリントを用いた咬合接触の安定化と段階的な補綴治療が咬合状態の改善に効果的であった。

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© 2018 一般社団法人 日本顎関節学会
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