日本顎関節学会雑誌
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症例報告
顎関節症との併発が考えられた慢性硬化性下顎骨骨髄炎の1例
森 啓輔合島怜 央奈小野 伸之檀上 敦久保田 英朗山下 佳雄
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2020 年 32 巻 1 号 p. 34-39

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抄録

慢性硬化性顎骨骨髄炎は難治性の骨髄炎で,症状の急性増悪を繰り返すとされており,SAPHO症候群の部分症状ともされている。開口障害などの症状を呈し,顎関節症との鑑別を要す疾患の1つとされている。今回,われわれは顎関節症との併発が考えられた慢性硬化性下顎骨骨髄炎の1例を経験したので報告する。

患者は20歳女性。右側顎関節部の痛み・開口障害を主訴に当科を受診した。顔貌は左右対称,開口障害と右側顎関節に圧痛・開口時痛を認めた。顎関節症と診断し,アプライアンス療法を2か月間施行し,若干の開口量増加を認めた。同時期,既往のぶどう膜炎に対して抗菌薬およびステロイドを他院にて投与されたところ,顎関節痛が軽度改善した。そのため,感染性の炎症性疾患も疑い,画像検査を行ったが,右側下顎枝の一部に軽度の骨硬化像を認めるのみであった。その後も症状緩解・増悪を繰り返していたが,2年後の画像検査で骨硬化範囲の拡大を認めたため,慢性硬化性下顎骨骨髄炎と診断し,ビスフォスフォネート製剤の投与を開始した。その後,症状は緩解傾向にあり,投薬開始後1年2か月経過するも症状は安定している。

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© 2020 一般社団法人 日本顎関節学会
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