日本顎関節学会雑誌
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下顎側方運動における顎筋活動に関する研究
中村 隆志吉川 健司大前 泰三井上 俊二石垣 尚一奥田 眞夫赤西 正光丸山 剛郎
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1989 年 1 巻 1 号 p. 19-26

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抄録

いわゆる顎関節症患者において, 閉口筋とくに咬筋および側頭筋に圧痛などの症状を認めるものが多い事が報告されている。我々は顎口腔機能異常のなりたちを知るべく研究を行ってきているが, 今回は下顎の側方運動をとりあげ, 側方運動時の咬合状態と咬筋および側頭筋の筋活性について検討を行った。
被験者は, 大阪大学歯学部学生で, 咀嚼筋群に症状を認めない者20名を用いた。静的咬合分析として, 咬合器装着模型上で側方運動時の接触状態を接触歯数および接触部位によって分類し, 口腔内で接触点の確認を行った。機能的咬合分析として, 両側の咬筋, 側頭筋前部および後部より表面筋電図を誘導し, シロナソグラフを用いて下顎運動を同時記録した状態で, 被験者には, 顎位を維持できる程度のクレンチを持続させたまま, 咬頭嵌合位から側方運動を計3回行なわせた。データは再生後, A/D変換し, 咬頭嵌合位から側方運動を開始する点を基準として, 側方運動を行なう以前の2秒間と側方運動中の2秒間の筋活動量について比較を行い以下の結果を得た。
1. 下顎側方運動時に側頭筋とくに後部は, 90%以上の被験者において作業側の筋で明瞭な筋活性を認めたが, その筋活性は側方運動時の接触歯数や接触部位には影響を受けなかった。2. 咬筋においては, 左右側方運動時ともに右側の筋活性が明瞭な被験者が多く, 作業側と明瞭な筋活性を認めた側とのあいだには一定した関係は認められなかった。

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© 一般社団法人日本顎関節学会
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