日本顎関節学会雑誌
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骨変形のない非復位性関節円板転位症例に対する顎関節腔洗浄・消炎鎮痛剤併用療法
開口練習の有無による治療効果について
中塚 健介福田 幸太栗田 賢一小木 信美湯浅 秀道高石 誠松浦 宏昭清水 幹雄中野 雅哉脇田 壮中島 克仁佐藤 春樹町田 純一郎
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2005 年 17 巻 1 号 p. 20-27

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抄録
目的: 近年, 顎関節滑液の生化学的分析により, 顎関節症の諸症状は顎関節内部の炎症に起因することが示唆され, 種々の治療法が行われている。なかでも顎関節腔洗浄療法はクローズドロック症例に対して, ロック解除, 症状の軽減に有用であるとされ, 保存療法との併用などで頻用されている。今回, 非復位性顎関節円板転位症例に対して, 消炎鎮痛剤投与を併用した2回顎関節腔洗浄療法を施行し, 開口練習追加の有無により症例を2群に分け, その経時的効果を比較検討した。
対象: 対象は, 1999年11月から2001年12月までに当外来を受診し, MRIにて非復位性顎関節円板転位と診断された70症例とした。
方法: 顎関節腔洗浄は2週間隔で2回行い, 治療開始時から消炎鎮痛剤を連日投与し, 開口練習群では自宅での自己開口練習を指示した。経過観察は, 2週間ごとに12週まで行い, 対象症例数に対する改善症例数を改善率として評価した。
結果: 改善率は12週で開口練習群76%, 非開口練習群で64%であった。最大開口域は治療開始後4週で開口練習群のほうが非開口練習群より有意に増加し, 以後も良好な経過を辿った。
結論: 消炎鎮痛剤投与を併用した2回顎関節腔洗浄療法はクローズドロック症例に対する有用な一次治療であり, 開口練習の追加により十分な開口域を短期間に得られることがわかった。
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© 一般社団法人日本顎関節学会
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