日本顎関節学会雑誌
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復位を伴わない関節円板前方転位から復位を伴う関節円板前方転位へ移行を確認した症例における治療前後のMR画像所見の比較
五十嵐 千浪小林 馨宮本 諭小川 匠福島 俊士今中 正浩湯浅 雅夫若江 五月木村 由美三島 章今村 俊彦柏原 広美
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2007 年 19 巻 2 号 p. 164-170

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抄録

目的: 復位を伴わない関節円板前方転位例が, 治療後のMR画像検査で, 復位を伴う関節円板前方転位の状態が維持, 確認された症例について, その画像所見の特徴を明らかにすること。
対象と方法: 治療後の顎関節MR画像検査で復位を伴わない関節円板前方転位が復位を伴う関節円板前方転位へ変化した10症例11関節を対象とした。全例女性で, 年齢は15~36歳であった。治療内容は, 対象側に顎関節腔造影検査および関節鏡視下剥離授動術とスプリント治療を行った1関節, 関節腔内洗浄・徒手的授動術とスプリント治療を行った3関節, スプリント治療のみ行った2関節, 経過観察のみ行った1関節, 反体側に顎関節腔造影および関節鏡視下剥離授動術とスプリント治療を行った1関節, 関節腔内洗浄・徒手的授動術とスプリント治療を行った3関節である。臨床所見としては顎関節部の痛み, 関節音, 開口障害について検討した。MR画像所見としては咬合時の下顎窩に対する下顎頭の位置, 関節円板形態と関節円板転位程度を検討した。
結果: 臨床所見は, 疼痛の消失は, 術前に有痛であった9関節中7関節 (77.7%) に, 関節音の消失は, 術前にクリック音を有していた5関節中1関節 (20%) に認められた。術後に関節音が出現したのは6関節中3関節 (50%) であった。開口距離の増加は, 術前に開口障害を有していた7関節中7関節 (100%) で認められた。MR画像所見の変化は, 下顎頭の位置変化は2/11関節 (18.1%), 円板形態変化は3/11関節 (27.2%), 円板転位程度の変化は5/11関節 (45.4%) で認められた。さらに, 下顎頭の位置の垂直方向への評価では, やや前下方へ変化していた。
結論: 比較的若い年代で, 関節円板変形がなく, 転位程度も軽度な復位を伴わない関節円板前方転位例は, 治療によって復位を維持できる可能性が示唆された。

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