日本顎関節学会雑誌
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顎関節症の臨床統計的観察過去10年間の臨床統計と予後調査
迫田 隅男芝 良祐真鍋 敏彦陶山 隆佐藤 耕一錦井 英資
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1990 年 2 巻 1 号 p. 79-88

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抄録

いわゆる顎関節症の臨床実態を把握し, 当科で行なった治療の効果について検討するため, 以下の調査を行った。
調査対象は, 昭和54年1月から昭和63年12月まで当科で顎関節症と診断された559症例で, うち昭和62年12月までに初診した486例に対しアンケートによる追跡調査を行った。
結果: 本症患者数が当科の初診患者に占める割合は平均5.8%で, 年々増加傾向にある。年齢別では20歳台が26.1%で最も多く, 50歳台に小さなピークを持つ二峰性を示した。男女比は, 男:女1:2.68と女性に多く発症していた。症状発現から当科受診までの期間は, 1年以上が29.9%で最も多かった。紹介元では歯科が30.9%, 整形外科が31.5%を占めていた。初診時の症状では, 疼痛と開口障害の合併が34.0%で最も多く, 疼痛を含むものが86.4%, 開口障害を含むものが56.7%, 雑音を含むものが45.1%であった。
治療は全ての症例に保存療法がなされ, 単独療法が42.9%, 二者併用療法が37.6%, 三者以上併用療法が14.5%であった。これらの治療成績は, 治癒あるいは軽快が34.0%, 不変3.9%, 治療中途脱落44.2%, 転医あるいは不明17.9%であった。
現在の症状についてアンケート調査を行ったが, 回収率は39.9%であった。その結果, 顎運動に全く障害なし41.8%, 時々不自由54.6%, 常時不自由3.6%であった。

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© 一般社団法人日本顎関節学会
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