抄録
近年, 習慣性顎関節脱臼の原因は, 顎関節部の骨の形態異常ではなく, 顎関節部を構成する軟組織の器質的あるいは機能的異常であると考えられている。しかし統一見解はなく, 治療法もさまざまである。
今回, 外科的治療が必要となった10症例16関節に対し臨床的な検討を行った。各種X線撮影法, 顎関節二重造影CT法 (7例10関節), MRI (4例6関節) などにより画像診断を行った。その結果, 顎関節部骨組織に特に異常は認められなかった。そして発症因子として, 咬合の変化や崩壊, 中枢神経疾患や薬剤の影響による神経-筋機構の異常, 関節円板の前方転位, 円板後部組織の異常, 関節包や外側靱帯の弛緩などが考えられた。また, 対象症例すべてにDautrey氏法が施術されているが, 全例とも経過良好である。