岩鉱
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論説
肥後変成帯中に産するザクロ石のセクター構造と組成累帯構造
吉村 康隆小畑 正明
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1995 年 90 巻 3 号 p. 80-92

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抄録

組織的なセクター構造を有するザクロ石が,肥後変成岩類のザクロ石—黒雲母—キン青石片麻岩より見いだされた。このザクロ石は,dusty coreとclear marginを持つ。このdusty coreは,薄片上では六角形ないしは八角形を示し,流体と固相の微細(<1 μm)な包有物を多数含んでいる。微細な包有物はほぼ直線的に配列しており,その方向はdusty coreの縁に対し垂直である。このセクター構造は,微細な包有物が{110}結晶面に対し垂直にそして直線的に配列している12個の菱形ピラミッドから成る斜方十二面体モデルによって説明される。また,このザクロ石は,コアでMnやCaに富み,リムでMgやFeに富む組成累帯構造がみられる。このザクロ石の2次元組成マップから得られた等組成線は,各セクター内での微細な包有物の配列方向に対し垂直な関係にある。この包有物の配列構造と組成累帯構造の直交性は,ザクロ石の結晶成長時の重要な初生的性質であると思われ,等組成線(3次元では等組成面)は,結晶成長時の{110}結晶面に平行な等時面であると考えられる。さらに結晶成長時の表面平衡の可能性,および初生的な(成長)組成累帯構造の拡散による改変の効果について議論した。

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© 1995 日本鉱物科学会
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