岩石鉱物鉱床学会誌
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長野縣上伊那の複合岩脈
石井 清彦植田 良夫
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1954 年 38 巻 6 号 p. 205-213

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抄録

以上のことから次の如く要約することが出来る。
1) 本実験に使用した資料の最周縁部のものは母岩との接触によつて夫等の問に成分の移動は考えられない。の程酸性に富んでいる。之の岩脈は複合岩脈と称せられるべきもので,岩漿分化によるsllccessive intrusionの結果と説明する方が妥当である。
3) 岩脈は曹長石化作用,炭酸化作用,緑泥石化作用等各種の変質作用を受け,之等の作用は岩脈の周縁部のもの程著しい。
4) Na2Oは中心部程減少し,岩漿分化の方向と逆な性質を示すが,之は岩漿分化によるNa2O増加と,周縁部程著しい曹長石化作用とが相減殺し尚曹長石化作用が強度であつた事を示すものである。
5) No. 2, No. 3では:MgOがNo. 1より少しく増加を示すが,之は各種の変質作用による影響例えば周縁部に於けるNa2O, CO2等の増加により相対的にNo. 2, No. 3で増加したものとして解釈出来る。
6) 岩脈に於ける各種の変質作用は母岩のチヤート層には認められず,自変成作用に依るものと老えるべきである。
7) 周縁部に斑晶の存在しないことにより,急冷周縁相を形成した早期あ岩漿は未だ結晶の生成が行われなかつた液相として貫いたものである。
8) 中心部に於ける斑状組織は之の迸入末期に下部に於ては既に斑晶鉱物の生成が岩漿中に見られたことを示すものである。
報告に当り本研究に使用した研究費の一部は交部省科学研究費に依つたことを明記して謝意を表わす。

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