北上山地の遠野,広田,気仙川,人首の4花崗岩体中の黒雲母と角閃石のδDを測定した。黒雲母,角閃石,マグマの水は水素同位体的に平衡であったと考えられる。その時の温度の最低が450-550°Cであったと仮定すると,最高の温度は700-1000°Cとなり,マグマの水のδDは-29~-37‰となる。高温と推定される花崗岩はより塩基性で,低温と推定されるものはより酸性である。
領家帯の非持,南向両岩体のものについても同じ測定をしたが,これは北上山地の例とくらべて,まったく異なった結果を示し,黒雲母,角閃石,マグマの水は水素同位体的に非平衡であった。そのことの理由はよく分らないが,これらの花崗岩体の形成史が単純でなかったことを示すものであろう。