抄録
屋久島花崗岩類の平均スズ含有量は,主岩相である斑状黒雲母花崗岩(宮之浦花崗岩)で6.1 ppm (n=7), その周縁相である斑状菫青石・白雲母含有黒雲母花崗岩(愛子岳花崗岩)で4.8 ppm (n=4), これらより後期の菫青石・白雲母・黒雲母花崗閃緑岩(吉田花崗閃緑岩)では3.4 ppm (n=3) である。屋久島花崗岩中の片麻岩ぜノリスの平均スズ含有量は4.5 ppm (n=10), 暗色包有物では5.1 ppm (m=14), 四万十層群のホルンフェルスでは3.2 ppm (n=3) である
屋久島花崗岩体の主体をなす宮之浦花崗岩の平均値6.1 ppmは,外帯花崗岩類の平均 (4.0 ppm; 石原・寺島, 1977) よりもかなり高い。この高いスズ含量は,原岩物質の高含有量とマグマの還元的な性質を反映しているものと思われ,この地域の四万十層群の基盤にスズ含量の高い片麻岩類が存在することを示しているのであろう