抄録
本研究の目的は, 日本の人事部員が捉えるAIによる人事業務への影響を心理的側面から明らかにすることである. 824名対象の質問紙調査を通じて, AIが人事業務に与える影響への肯定・否定的態度, AIによる人事業務の代替・補完期待, について量・質的データを得た. 分析の結果, (1)AIが人事業務に与える影響は概ね肯定的に捉えられていること, (2)情報処理・管理的業務に対しては直接的な補完期待を有すること, 他方で(3)対人的業務に対しては間接的な補完期待を有すること, (4)補完期待には構成要素があり順序・プロセス化できること, が判明した. また人事部員特有の矜持がAI業務代替への否定的態度と関係しうることが示された. 本結果から, 将来の人事業務では非定型的な対人的スキルを要する業務についてもAIを補完利用することの推進や活発化が示唆される.