2019 年 17 巻 p. 424-440
本稿は,佐藤慎司,村田晶子(編著)『人類学・社会学的視点からみた過去,現在,未来のことばの教育―言語と言語教育イデオロギー』の書評である。本書は,ことばの教育に携わる人々が自身の営為を見つめ直し,新たな一歩を前に踏み出すために編まれた学術書である。本書は,ことばの教育における人類学・社会学的アプローチの理論的意義のまとめ,人類学・社会学的視点からことばの教育における「あたりまえ」を疑う立場からの論考,人類学・社会学的視点からの言語コミュニケーション教育の実践例で構成されている。13人の執筆者は,ことばの教育の中で「あたりまえ」になっていることに様々な疑問を持ち,ことばの教育を問い直す必要性について論じている。本稿では,1章ごとに内容を紹介した上で,今後のことばの教育の展望について述べる。