本研究では,中国語を母語とする日本語学習者を対象に,教室外で日本語の映像作品を視聴する際の字幕言語選択について調査した。527名の協力者による質問紙の回答と199名の協力者による音声語彙サイズテストの回答を用いて,(1)選択される字幕タイプはどのような傾向があるか,(2)字幕の言語選択に影響を与える要因は何か,(3)日本語語彙知識の量によって字幕タイプの利用傾向及びその影響要因に変化があるか,(4)字幕タイプが語彙学習に与える影響について学習者はどのように認識しているかという4つの課題について分析を行った。その結果,(1)日本語よりも母語である中国語が入っている字幕が多用され,中国語と日本語以外の第三言語の字幕の利用が少ないこと,(2)映像作品の内容への興味の深さが字幕の言語選択に最も強い影響があり,日本語字幕の利用頻度は語彙学習意欲の強さによって変動しやすいこと,(3)語彙サイズによる字幕の言語選択およびその要因への影響が弱いこと,(4)語彙学習意識が高まると中国語字幕よりも日本語字幕の補助が求められることなどが示された。これらの知見を踏まえて映像作品の字幕利用について提案をした。