コーダとは聞こえない親を持つ聞こえる子どもの呼称である。本論文では,コーダ当事者である筆者が行ったコーダ4名へのインタビュー調査の結果をもとにコーダの手話継承の実態について述べ,コーダの手話継承に影響する要因について分析した。その結果,手話を継承したくてもできなかったコーダの存在やその背景に手話言語の社会的地位やオーディズムが影響していることがわかった。継承語教育の観点では手話の標準を揃えるべきかなど,他の継承語教育の課題と重複する点もある。一方で,コーダは成人までに手話を学習できる場が限られていたり,手話に福祉的要素があり「継承語」として見られにくかったりするなど,他の継承語とは異質の問題も抱えている。また,手話を学習したいと思うコーダは親の文化や言語の継承を目的としているわけではなく,親子間コミュニケーションの不全感を取り除くことを目的としていることも考察された。