抄録
症例は68歳女性.既往歴は糖尿病,高血圧,高脂血症.くも膜下出血で当院・脳神経外科に入院しコイル塞栓術を施行,術後経過中に左下腹部痛,血便があり当科紹介となった.下部消化管内視鏡検査で直腸Rsに拍動を伴う径約15mm,求心性の小血管集簇像を認め,腹部造影CTで直腸壁に造影早期に濃染される領域,3DCTで上直腸動脈を流入血管とする血管集簇像を認め動静脈奇形と診断した.その後断続的に少量の血便を認めたため動脈塞栓術を施行した.下腸間膜動脈造影で上直腸動脈分枝の拡張とその末梢での造影剤のpooling及び早期の静脈環流を認め,流入血管である上直腸動脈の分枝2本に対してコイル及びN-ブチルシアノヒストアクリル(NBCA)で塞栓術を行った.術後7日目の下部消化管内視鏡検査で病変部の血管拡張像は消失し小潰瘍を形成,その後再発は認めていない.消化管内視鏡で拍動を伴う血管性病変を認めた場合はAVMを念頭に置き外科切除を前提として3D-CTやIVRによる精査を行う必要があるが,周術期リスクが高い症例では低侵襲なIVR治療が有用である.IVRで治療を行う際には異常血管の集簇(nidus)を確実に塞栓するためにNBCAの使用が必要と考える.