2016 年 58 巻 9 号 p. 1453-1465
重症急性膵炎後のwalled-off necrosis(WON)は重篤な局所偶発症であり,感染例や有症状例は侵襲的治療が必要となる.近年,こうしたWONに対するEUSガイド下ドレナージと内視鏡的ネクロセクトミーによる経消化管的治療が開発され,良好な治療成績が得られている.現在では,専用の大口径メタルステントを用いる方法や追加内視鏡ドレナージテクニックにより,多くのWONは内視鏡治療単独で治癒可能となっている.しかし手技に伴う重篤な偶発症も経験されるため,内視鏡治療に固執することなく,経皮的アプローチや外科手術も考慮した広い視野での治療戦略が必要である.本稿では,WONに対するわれわれの内視鏡治療戦略と手技のポイントについて概説する.
2007年に急性膵炎分類のワーキンググループ(Acute pancreatitis classification working group:APCWG)から提唱された改訂Atlanta分類 1)および,その後各国の専門家による検証が行われ,2013年1月にGut誌に発表された国際コンセンサス 2)は,それまで分類上の異同があって混沌としていた膵炎後局所合併症を,病態に基づいたカテゴリーとして再分類させた.この分類により,壊死性急性膵炎に伴う浸出液や壊死物質の貯留は,発症4週未満の初期のものはacute necrotic collection(ANC),壊死物質の液状化が進み被包化され発症後4週以上経過したものはWalled-off necrosis(WON)と提唱された.本邦でも,2014年11月に改訂Atlanta分類に基づいた「膵炎局所合併症(膵仮性嚢胞,感染性被包化壊死等)に対する診断・治療コンセンサス」 3)が上梓された.壊死組織を多く含み感染を伴ったWONは抗生剤などの保存的治療のみでは感染の制御が不能で菌血症から多臓器不全に至るため,侵襲的なドレナージが必要となる.近年,内視鏡治療がWONに対する低侵襲治療として脚光をあびている 4)~7).そこで,本稿で重症急性膵炎後WONに対するわれわれの内視鏡治療手技について述べる.
WONの治療適応に関して明確なコンセンサスは得られていないが,感染兆候を認めるものを治療適応と考え,何らかの臨床症状を伴うもの(慢性腹痛・嘔気,消化管圧迫に伴う通過障害など)も治療を検討する.実際の臨床経験からは大きなWONで大量の壊死組織があってもドレナージすら必要ない症例もあり,無症候性のものは基本的には経過観察可能と考えられる.しかし,径6cm以上で発症後6週間経過した膵仮性嚢胞は自然消失しづらく,無症状であっても経過中に感染,出血,腹腔内破裂等の危険性があり,ドレナージが必要となる場合が多い(いわゆる6・6ルール)とされていた 8).この報告は旧Atlanta分類で定義された急性仮性嚢胞の自然経過に関する検討であることを考慮する必要はあるが,急性膵炎後のWONについても同様であると考えられる.無症候性であっても時間経過とともに消退する兆しがない,むしろ増大傾向であるWONは,経過観察中に感染や嚢胞内出血を来す可能性が高いため,重篤な合併症を併発する前の全身状態が安定しているうちに治療導入を検討するのが望ましいと考える.
侵襲的治療導入のタイミングに関しても一定の見解は得られていない.急性膵炎後4週を満たないANCの段階では壊死組織が十分に液状化しておらず,周囲が十分に被膜で覆われていないため処置に伴い腹腔内穿破の危険性があり,待機的にドレナージを行った方がよいという報告がある 9),10).しかし,近年は低侵襲ドレナージを先行させる治療が主流であり,技術や処置具も進歩しているため状況が異なる.実臨床では,抗生剤による保存的加療を行っているうちに,感染に伴うARDS,DICや嚢胞内出血を合併し,全身状態が悪化することでその後の侵襲的治療に難渋する症例も経験する.炎症の波及や嚢胞内圧の上昇に伴い周囲の腸管への穿破も見られ 11),12),液体成分が少なくなることによりその後の治療手技の難易度が上がる症例も経験する.とくに大腸に穿破すると,ドレナージ手技が成功しても感染の制御に難渋する大きな問題となりうる 13).画像上で液状化が進み被包化されていれば,厳密に4週経つまでドレナージを待つ必要はなく,侵襲的治療導入のタイミングを逸さないことも重要と考える.
従来,壊死組織を多く含むWONに対して開腹下で壊死物質除去術(ネクロセクトミー)が行われていた.しかし,感染に伴う悪い全身状態での侵襲性の高い手術はリスクが高く,報告でも偶発症率55%,死亡率14%とされ 14),開腹手術に比べて低侵襲で有効な治療法が求められていた.ERCP手技を用いた経乳頭ドレナージでは,膵臓への負荷による膵炎の再燃や増悪も危惧される.また,WONの場合はドレナージルートとして確保できる程の膵管との交通を有していない症例の方が多い.仮にドレナージチューブが留置できたとしても,ほとんど液体成分である膵仮性嚢胞とは異なり壊死組織を含むWONに対してはドレナージ不十分となる可能性が高い.そこで開発されたのが超音波内視鏡(EUS)を用いたEUSガイド下ドレナージと,それに引き続く内視鏡的ネクロセクトミーによる経消化管治療である.1992年にGrimmらが初めてEUSガイド下ドレナージを報告し 15),現在WONに対する治療として広く普及している.急性膵炎後の嚢胞形成の病態を考えると,急性膵炎の波及により網嚢腔に液体貯留したものか(すなわち胃壁そのものが嚢胞の壁となっている),急性膵炎に伴う膵管の破綻により生じた嚢胞が網嚢腔外に被包化されたもの(嚢胞壁と胃壁が癒着していなければ穿刺した際に内容液が腹腔内に漏出する可能性がある)が考えられる.WONの大部分は前者であり,経消化管治療を比較的安全に行うことができる.EUSガイド下であれば,消化管と嚢胞壁との間が最も短い穿刺経路を選択できる.門脈・脾静脈の閉塞に伴う門脈圧亢進症を来たし,胃周囲の側副血行路が発達している症例もあるが,EUSで介在血管の有無を確認しながら穿刺できるため直視内視鏡下に穿刺するより安全性が高い 16).本邦の治療コンセンサスでも外科治療の前にEUSガイド下の経消化管治療を検討することが推奨されている 3).WONに対するEUSガイド下ドレナージ法の有効性が多く報告されているが,内径の狭いプラスチックステントではドレナージが不十分なことも多い.実際,感染を伴ったWONに対するEUSガイド下ドレナージ単独の臨床奏効率は40-50%程度と報告されている 17).そのような症例に対して,ドレナージによって造設された胃壁とWONの瘻孔から内視鏡を挿入して感染した壊死組織を除去する内視鏡的ネクロセクトミーの方法が,2000年にSeifertによって初めて報告された 17).その後,この手技はhigh-volume centerを中心に多施設多症例の検討や比較対照試験が報告されており,その結果では治療成功率は75~91%,合併症の発生率は26%~33%,死亡率は5.8%~11%であり,開腹でのネクロセクトミーより安全性の高く有用な治療法であることが示唆された 18)~21).
2010年にオランダから経皮的もしくは内視鏡的ドレナージを先行させ,必要に応じて後腹膜アプローチによる低侵襲ネクロセクトミーを追加するというstep-up approachと開腹ネクロセクトミーを比較した無作為比較試験が報告され,step-up approach群の方が低侵襲に治療が行えるという結果であった 22).さらに,2014年に報告された単施設少数例検討ではあるが,内視鏡的ネクロセクトミーと外科的step-up approach比較した結果では,内視鏡的ネクロセクトミー群の方が偶発症の発生率が低く,医療経済面でも優れていたと報告されている 23).こうした研究結果より,感染を伴ったWONの治療戦略として低侵襲なドレナージから治療を行い,その治療効果を見ながら症例に応じて侵襲性の高い治療を追加していく治療戦略がコンセンサスを得つつあり,特に経消化管内視鏡治療は低侵襲で有用性が高い.
内視鏡的ネクロセクトミーの開発に伴いWONの内視鏡治療による臨床奏効率は80%を超えるまでに改善されてきた.しかし,言い換えると未だ約20%の症例に関しては治療困難例が存在する.WONは被包化されていても単房性の形態を呈する症例は少なく,多房性で複雑な形態を呈することが多い.中には後腹膜腔から左右の骨盤まで広がる巨大なWONの症例も経験する.つまり,膵周囲の主病巣を経消化管的にドレナージとネクロセクトミーを行っても,分離した副病巣がドレナージ不良となり感染の制御に難渋することがある 24).そのような複雑な形態を呈する難治性WONに対する有用な治療法として,追加内視鏡ドレナージテクニックや,経皮的ドレナージ治療と内視鏡治療を組み合わせたHybrid approachが報告されている 25).われわれは,このような様々なテクニックやデバイスを駆使した“内視鏡的step-up approach”(Figure 1)の方法を用いて,可能な限り低侵襲な治療で良好な臨床奏効率を目指している.さらに,膵炎による治療期間も考慮すると入院期間は長期化するため,ADLの保持や治療の効率化も重視しながら症例に応じて治療戦略を練っている.

WONに対する内視鏡的step-up approach.
フルニトラゼパム(サイレース®),ペンタゾシン(ソセゴン®)を用いてしっかり鎮静をかけて手技を行う.比較的若年で大酒家の患者等,鎮静鎮痛をかけても激しい体動が懸念される場合は,体位固定具を使用して安全に手技が行えるように準備を整える.穿刺からステント留置まで,すばやく完遂することが安全かつ確実に手技を成功させるコツとなるため,人手の確保と処置具の準備は極めて重要である.まずコンベックス式超音波内視鏡(GF-UCT240 or GF-UCT260,OLYMPUS)を挿入して病変を描出する.WONは被包化された液体成分の中に高エコーの壊死組織を認めるが,液状化した部分が少ない場合やWON内に空気を含有する場合には,周囲の脂肪織や空気を含有する消化管と鑑別が安易でなく,WON自体を明瞭に描出できない場合もある(Figure 2).CTでの消化管とWONの位置関係,透視下でのスコープの位置などを参考に慎重に観察して病変を同定する.穿刺部位とスコープポジションは穿刺後の手技難易度に影響する非常に重要なポイントである.穿刺部位は嚢胞壁と消化管壁が癒着していると考えられる場所で穿刺距離が1cm以内であるのが望ましい.また液体成分の多い場所の方が,ガイドワイヤーをEUS画像で視認しやすいので,穿刺軸を保持しやすい.胃体下部からWONの膵頭部側を狙うと最も大きく病巣が描出されてもスコープを押し込み,且つかなりアップアングルのかかった状態となる.手技中にスコープが胃壁から離れてしまい穿刺軸を保つ事が難しく,また胃壁と病巣が離れてしまう症例もある.穿刺可能なスペースがあれば,胃体中上部からWONの膵尾部側にアプローチした方が手技は行いやすい(Figure 3).スコープのアングルや押し引きを行って消化管壁に対して垂直に力が伝わる部分を探し,スタイレットを入れた状態で押してみて消化管壁があまり逃げないような部位がよい.ドプラモードで穿刺ルートに介在する血管がないことを確認後に,EUSガイド下に19G穿刺針でWONを穿刺する(Figure 4-a).穿刺後,吸引して感染した嚢胞内の液体を少量吸引し,排液は培養検査に提出する.液体成分の少ないWONでは19Gで穿刺しても液体が引けないことがしばしばある.確実に嚢胞内であることを確認するために造影剤を少量注入する場合もある.次に,硬い0.025インチのガイドワイヤー(VisiGlide,OLYMPUS)を嚢胞内にループを作って長めに留置する.嚢胞内を探ると引きの操作でガイドワイヤーがキンク,切断される危険があり,できるだけ引き操作を行わず回転などのトルクにて探るのが望ましい.この点でカット面の大きいMedi-globe社製のSonotipが穿刺針として有用と考える.引き続きガイドワイヤー誘導下に通電ダイレーター(6-Fr Cyst Gastro Sets, Endo-Flex)で穿刺部の拡張を行う.拡張の際に軸がずれると処置具の挿入が困難となるため,常にEUS画像を意識して穿刺軸であるガイドワイヤーが1本の線として描出されるようにスコープ操作を行う(Figure 4-b,c).人手が確保できれば,穿刺の際から介助者にスコープを口元で保持してもらうと手技中に軸がずれにくい.このスコープ軸の保持は重要であり,EUSの経験がある程度豊富な介助者にEUS画像に集中してもらい微調整してもらうと良い.4-6mmの胆道拡張用バルーン(Hurricane RX,Boston Scientific)を用いてさらに瘻孔を拡張する(Figure 4-d).拡張バルーンはEUS画像にて視認しやすいので,この際にスコープの位置と穿刺軸を再確認する.その後,1本から複数本の7Fr両端ピッグテイル型プラスチックステント(Zimmon stent,Cook medical)と5Frもしくは6Frの経鼻ドレナージチューブ(Hanaco Medical)を留置する内外瘻同時留置を基本としている.ステントの迷入を予防するために消化管側のピッグテイルの手前にマジックでマーカーを付けておく.ゆっくりステントを嚢胞内に進めながら瘻孔部から距離を取り,内視鏡でマーカーを確認してステントを留置する.プラスチックステントは10Frもあるが,7Frと治療成績は変わらないと報告されており,留置しやすい7Frで十分と考える 26).壊死組織が少なく液体成分がメインであるWONに対しては,留置するプラスチックステントは1本で十分であるが,壊死組織を含むWON,特に画像上引き続きネクロセクトミーが必要になる可能性が高いと思われる症例に関しては,ネクロセクトミーの際の瘻孔拡張を安全に行うためとドレナージ効果を得るために2本以上留置するのがよい.経鼻ドレナージチューブもしくは複数本のプラスチックステントを留置する際にはダブルガイドワイヤーテクニックが有用である 27).この方法は,ステント留置前にダブルルーメンカテーテル(PIOLAX)もしくは10Fr Soehendra拡張カテーテル(Cook medical)を用いて嚢胞内に2本のガイドワイヤーを留置した後にステントを留置していく方法であり,効率よく手技を行うことができる(Figure 4-e,f).

WONの超音波内視鏡所見.
a:液体成分が多く,病巣の認識が安易なWON.
b:液体成分が少なく,壊死組織量が多いため全体像が不明瞭なWON.

EUS下ドレナージの穿刺部位の選択.
a:膵頭部側を選択するとアングルがきつく,胃壁から病巣への距離も遠い.
b:膵尾部側を選択するとアングルがゆるく,穿刺軸も保持しやすい.

EUS下ドレナージ(内外瘻ドレナージ).
a:EUSガイド下に19GでWONを穿刺.
b:ガイドワイヤーが1本の線として描出されるように調整して穿刺軸を保持.
c:通電ダイレーターで瘻孔を拡張.
d:拡張バルーンで瘻孔を拡張.
e:ダブルガイドワイヤーテクニック.
f:両端ピッグテイルプラスチックステントと経鼻ドレナージチューブを留置.
良好なドレナージ効果や瘻孔の早期形成を目的にプラスチックステントの替わりに胆管用フルカバードメタルステントを留置する報告も散見される 28)~31).複数本のプラスチックステントを留置するより簡便であり,大口径のためドレナージ効果は高いが,逸脱迷入予防のために長めのステントを留置する必要がある.ステントを留置したままで内視鏡的ネクロセクトミーを行うのが理想であるが,ステント長が長く,スコープ操作により迷入等の可能性があり,結局,抜去してから行う必要がある.また治療経過で嚢胞が縮小するとともにステント逸脱や,嚢胞壁にステント端があたり嚢胞内出血も懸念され,プラスチックステントに比べて高額にもかかわらず利点が少ない.そこで近年,両端がアンカーになったEUSガイド下ドレナージ専用のメタルステントが開発された.一旦留置すれば何度でもスコープの出し入れが可能でネクロセクトミーが容易にでき,臨床研究の段階ではあるが治療に用いられている 32)~35).Xlumena社のAXIOS(内径10mm or 15mm,有効長10mm),Taewoong社のNagi(内径16mm,有効長30mm),MI Tech社のHANARO(内径14mm,有効長20mm or 30mm)などアンカー部分の形状やデリバリーシステムの異なるいくつかの種類が存在する.留置方法は,4-6mmの拡張バルーンで瘻孔部を拡張するところまではプラスチックステントの時と同様である.その後ガイドワイヤー誘導下にシースを嚢胞内に進め,嚢胞側を展開するとEUS画面でステントが展開されたことが確認できる(Figure 5-a).ゆっくりステントを引いてステントの嚢胞内腔側の位置を合わせ,今度はEUSをゆっくり引きながら内視鏡画面で瘻孔部を確認し,マーカーが消化管側に出ていることを確認してから消化管側を展開する.ステント留置後は一気に嚢胞内溶液が排出され,大口径ステントのドレナージ効果の高さを実感することができる(Figure 5-b).穿刺・通電による拡張・ステント留置を同時に行うことができる一体型ステントデバイス(HOT-AXIOS,Xlumena)も開発されており,その有用性と安全性が報告されている 36).

専用大口径メタルステントを用いたEUSガイド下ドレナージ.
a:嚢胞側のステントを展開してEUS画像で確認.
b:感染した嚢胞液が大量に排出.
内視鏡ネクロセクトミーは開腹下ネクロセクトミーに比べると低侵襲であるが,重篤な偶発症や手技に関連した死亡例も報告されており,必ずしも「安全」な治療法とは言えない 37).従ってその適応は慎重に判断する必要がある.内視鏡的ネクロセクトミーを行うタイミングとしてはドレナージ後,数日あけて行うのが望ましいと考える.その理由として,(1)胃壁と嚢胞壁の癒着が十分でなかった場合,一期的に行うスコープが腹腔内に迷入して穿孔するリスクが高くなる,(2)ドレナージのみで臨床所見が改善する場合は,偶発症発生率が決して低いとは言えないネクロセクトミーを行う必要はない,(3)内視鏡的ネクロセクトミーの最も多い合併症は出血であり,その1つの原因が瘻孔部のバルーン拡張に伴う出血であり,二期的に拡張する方が出血のリスクを下げる,といったことが挙げられる.
われわれの行っている手技の方法を述べる.通常の上部消化管用直視内視鏡を挿入し,ERCPカテーテルで瘻孔部よりガイドワイヤーをWON内に留置する.次に,18mmから20mmの拡張バルーン(CRE balloon,Boston Scientific)で瘻孔を拡張して,バルーンをデフレートしながらゆっくりと内視鏡をWON内に挿入して行く.内部を生理食塩水でよく洗浄し,良好な視野が得られるようになってからスネアや鉗子を用いて壊死組織を少しずつ取り除いていく.大腸ポリペクトミー用の10mmミニスネアを用いると無理のない程度に大きく壊死組織を除去することができ,効率がよいため好んで使用している.0.1%-0.3%の低濃度過酸化水素水を壊死組織に散布することで,周囲組織から剥がれやすくなりネクロセクトミーの効率が上がるとの報告もある 38).血管損傷や穿孔に注意しながら除去をすすめ,適宜しっかり洗浄してピンク色をした肉芽が確認できればその場所は十分である.医療経済面からもステントは抜去せずにネクロセクトミーを行うようにしているが,ステントが邪魔であれば必要に応じて抜去している.また重要なことは空気塞栓を予防するために送気は必ずCO2を用いることである.CO2を用いても過度の送気は嚢胞穿破の原因ともなり,稀ではあるがCO2塞栓も起こりえるため禁物である.1回の手技時間は概ね1時間以内を目安に週2回の頻度で行うようにしている.ネクロセクトミーのエンドポイントに関しては,完全な壊死組織の除去と良好な肉芽組織の露出が望ましいが,発熱や炎症反応が落ち着いてきた段階でステント留置のみで終了してよいと考えている.むしろ主病巣のネクロセクトミーを行っても感染の制御に難渋する場合は副病巣がドレナージ不良となっている可能性が高く,後述する追加ドレナージを検討すべきでネクロセクトミーの回数を無理に重ねることは合併症発生の観点からも避けるべきである.
ドレナージに専用の大口径メタルステントを使用した場合,内視鏡的ネクロセクトミーを行う際にはステントの中からWON内に内視鏡を何度も出し入れが可能であり,ネクロセクトミーを効率良く行うことができる.アンカー部分がしっかり固定されているためステントが逸脱する心配はほとんどない.バルーン拡張も必要ないため処置時間が短縮でき,出血のリスクも軽減される.内視鏡的ネクロセクトミーは格段に行いやすいが,1回の処置で無理に奥へとネクロセクトミーを進めることは避けている.ステント周囲の壊死組織を除去していけば,WONの縮小とともに奥の壊死組織が押し出されてくるため,無理せず処置の回数を分けることで壊死組織に隠れた血管の損傷や穿孔のリスクを軽減できる.われわれの経験上,この専用メタルステントを用いることでの大きなトラブルは経験しておらず安全性は問題ないと考える.最終的な治療成績に関して従来のプラスチックステントと大きく変わらないかもしれない.しかし,治療に難渋するような大きく複雑な形態を呈しるWONに対してネクロセクトミーや追加ドレナージが行い易いという点で有用性が高い.メタルステントはプラスチックステントに比べて高額だが,治療困難例に対しては効率よく治療を進めることができるため,医療経済面でもむしろ優れている可能性がある 35).
Step3.追加内視鏡ドレナージテクニックWONは被包化されても仮性嚢胞のように類円形で単房性の形態を呈する症例は少なく,多房性で複雑な形態を呈することが多い.基本的にはそれぞれの腔は交通を有している.しかしその交通が細い場合,主病巣のドレナージとネクロセクトミーが有効であっても感染の制御に難渋する.そのような多房性WONに対する内視鏡治療法として,MTGT(multiple transluminal gateway technique)とSTGMD(single transluminal gateway transcystic multiple drainages)という内視鏡追加ドレナージテクニックが報告されている 39),40).MTGTは2011年にVaradarajuluらによって報告された方法で,複数の別々の場所からEUSガイド下ドレナージを行い,必要に応じてその複数の瘻孔から内視鏡的ネクロセクトミーを行う方法である.経鼻ドレナージチューブを留置してベッドサイドで生理食塩水を用いて洗浄・灌流を行う場合,瘻孔を複数形成することによってその洗浄効果を高めるという利点もある.一方で,副病巣が脾門部や骨盤側に延びている場合など,消化管から離れた場所に存在し,経消化管的に穿刺困難な場合にはSTGMDが有用である.先に述べた通り,主病巣と副病巣は基本的には細い交通を有することがほとんどであり,主病巣内からERCPカテーテルと柔らかい親水性ガイドワイヤー(0.032inch Radifocus,Terumo Co)を用いてその交通を探る.副病巣内にガイドワイヤーを挿入することができればその交通を通して7Fr両端ピッグテイル型プラスチックステント,もしくは経鼻ドレナージチューブを留置して副病巣のドレナージを行う方法である.このMTGTとSTGMDを用いることで,さらなる内視鏡治療単独の治療成績向上が期待できる.しかし,多房性のWONのすべての副病巣に対してドレナージが必要かというとそのような事はない.経験的に副病巣が小さい場合は,主病巣のドレナージが良好であれば抗生剤治療を継続していると副病巣は縮小してくる.われわれの検討では,65m3以上の副病巣(概ね5cm大)はドレナージが必要となる可能性が高く,積極的にドレナージを考慮すべきである 24).
Step4.Hybrid approach(経皮アプローチによる内視鏡的ネクロセクトミー)経皮的ドレナージは,低侵襲で有効な方法であるが再発や難治性皮膚瘻などの問題や患者のADLを低下させるといった理由から,近年はEUSガイド下ドレナージの確立に伴い第一選択とはしない傾向にある.しかし,しばしば経験する後腹膜腔から左右の骨盤まで広がる巨大なWONの症例に対しては必要となる.骨盤腔は元々スペースのあるため,液状化したWONが骨盤まで広がると骨盤腔内に大きな副病巣を形成しやすい.基本的に膵周囲から骨盤腔内の腔まで交通を有するため,先述したSTGMDの方法を用いて長いプラスチックステントや経鼻チューブを留置して経消化管的にドレナージを行うことは可能である.しかし,大きな副病巣を形成し壊死組織も多い場合は,ネクロセクトミーを行わなければ感染の制御が付かない.経消化的に膵周囲からの細い交通を通って内視鏡を骨盤腔まで挿入してネクロセクトミーを行うことはリスクが高い.骨盤腔まで及ぶような巨大なWONに対しては,経消化管的な内視鏡治療の限界であり,経皮的アプローチを早期に検討すべきである.WONに対する低侵襲な外科手術法である腹腔鏡補助下壊死巣除去(VARD:video-assisted retroperitoneal debridement) 41)を応用した内視鏡治療であるHybrid approach法が報告されている 25),42),43).まず骨盤腔内の副病巣へのアプローチとして超音波ガイド下もしくはCTガイド下にWONを経皮的に穿刺し,ドレナージチューブを留置する.ドレナージチューブを留置後,概ね1週間で瘻孔が形成されるので,その瘻孔をラージバルーンで拡張し,瘻孔部に大口径メタルステントを留置する.ピンセットなどを用いてメタルステントが逸脱しないように固定する(Figure 6-a).用いるステントは両端がアンカーになった食道ステントや前述した専用メタルステントがよい.後日,留置したメタルステントから骨盤腔のWON内に細径内視鏡を挿入して内視鏡的ネクロセクトミーを行うことができる(Figure 6-b).治療後,ステントを抜去すると,栄養状態に問題がなければすぐに肉芽が増生して翌日には瘻孔はほぼ閉鎖される(Figure 6-c,d).症例報告のみで,安全性有効性ともにさらなる検討が必要ではあるが,静脈麻酔のみで処置可能であり,通常の経皮的処置と同様に行う事ができ,低侵襲な治療法と考える.

Hybrid approach.
a:経皮的に大口径メタルステントを留置.
b:細径内視鏡を用いてネクロセクトミー施行.
c:メタルステント抜去後.
d:メタルステント抜去翌日.
内視鏡医療機器が進歩し様々な治療方法が開発されるにつれて,WONによる死亡率は大幅に改善されてきた.さらに死亡率の改善のみならず,より低侵襲に,より短期間で治療可能となってきている.しかし,内視鏡的ネクロセクトミーの小さな鉗子やスネアで除去できる壊死組織と外科的ネクロセクトミーによって除去できる壊死組織とはまったく量が異なる.近年,外科の領域でも開腹から腹腔鏡下ネクロセクトミーへと進化しつつあり,近年のロボット手術の進歩もあわせると外科的治療もまだまだ重要な位置を占めてくる可能性がある.いずれにしてもWONに対する治療は内視鏡的治療に固執すべきでなく,経皮的アプローチさらには外科的アプローチも含めた総合的な戦略で臨むことがより良い治療につながるものと考えられる.
前述のように,われわれはWONのドレナージは経消化管治療を第一選択としており,膵臓への負荷も懸念してERCP手技は基本的には行っていない.ほとんどのWONでは,膵実質の壊死に伴う膵管破綻による膵液漏出が起きていても末梢の膵管であり,WONの治療過程で自然に修復されるものと考える.しかし,広範囲壊死に伴い主膵管レベルで膵管破綻を起こすこともあり,自然修復がされずに周囲への膵液漏出が遷延する症例もある.このいわゆるdisconnected duct syndrome(DPDS)は重症急性膵炎WONの16-23%程度に併発すると言われている 44),45).実際に,WONに対する治療が奏効し画像上で著明な縮小が確認できても,食事を開始すると膵液漏出が増え,腹痛や嘔気の症状とともに高アミラーゼ血症が遷延する症例も経験される.また,経消化管ドレナージチューブの自然逸脱や閉塞に伴うWON再発の因子となりうる 46).臨床経過や画像所見からDPDSが疑われる症例に対しては,WONの治療後に膵管造影を行っている.DPDSが認められれば,経乳頭的治療を試みる.膵管内圧を低下させる目的で内視鏡膵管口切開(EPST)を施行する.引き続き膵管破綻部を越えて尾側膵管までガイドワイヤーを留置することができれば,破綻部の頭側膵管と尾側膵管を橋渡しするように5Frの膵管ステントを留置する.膵管ステントは3カ月おきに交換を行い,膵管造影にて破綻部閉鎖したことを確認してステントフリーとしている.
治療後,再発予防のために内瘻のプラスチックステントは抜去しない方がよいと考える.無作為比較試験にて抜去した群の再発率が高いと報告されており,ステントを長期留置することによるトラブルは認められなかった 47).
メタルステントを長期留置しておくことによる影響は明らかではないが,周囲への組織障害を懸念して治療後に抜去している.タイミングは概ね治療後1-2カ月後に行っており,スネアで把持して問題なく抜去が可能である.1年近く留置した場合,WON縮小に伴い肉芽組織が嚢胞側のアンカー部分に食い込んでステント抜去が難しくなる症例も経験するため,1-2カ月が妥当と考えている.メタルステントを抜去した後は,再発予防目的に可能な限り瘻孔部にプラスチックステントを1-2本留置している.
本稿ではWONに対する経消化管的内視鏡治療の手技について概説した.その進歩は著しく,多くのWONは内視鏡治療単独で治癒可能となってきた.WONの診断と治療に関して確立されたものはないが,エビデンスも蓄積されてきている.アジア8カ国の胆膵内視鏡治療のエキスパート達により,蓄積されたエビデンスとエキスパートの意見をもとに作成されたステートメントも公表されている 48),49).内視鏡技術や処置具のさらなる進歩・普及,さらなるエビデンスの蓄積により,重症急性膵炎に伴う致死的偶発症であるWONに対する安全かつ根治性の高い低侵襲治療が確立されることを望む.
本論文内容に関連する著者の利益相反:なし