2016 年 58 巻 9 号 p. 1508-1511
当院は1952年10月,大阪市福島区で,大阪厚生年金病院の名称で開院.年金・健康保険福祉施設整理機構法の改正に伴い,全国の社会保険病院,厚生年金病院,船員保険病院等の運営が統合され,2014年4月,独立行政法人 地域医療機能推進機構(JCHO:ジェイコー)大阪病院と改称し,今年2016年で64年を迎える伝統ある病院である.従来より女性スタッフが多いことも特徴で,子育て支援等を積極的に行い,ワークバランスに配慮している.
2015年5月からは新病院に移転し,内視鏡室の拡充を行った.内視鏡ブース,およびリカバリーベッドが増設され,より鎮静をかけやすい環境となり,検査の際の患者さんの苦痛に配慮している.
当院では,前内視鏡センター長の道田知樹医師(現 帝京大学ちば総合医療センター第3内科)が,近畿地区でいち早く,内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を導入した.このため,ESD件数が多いことが特徴であり,これまで,胃のESD件数が多かったが,最近は,大腸ESD件数の増加が著しく,独自に考案したクリップフラップ法も適宜使用しており,ESD総件数や検査件数は増加してきている.
組織内視鏡センターは,独立した診療部門として位置付けられ,検査・治療は消化器内科医師が中心に行っている.
検査室レイアウト

新病院では,5部屋の内視鏡ブースと透視下内視鏡は別室1室を主に利用して行う診療体制となっており,旧病院に比べ,1ブース増加した.リカバリーベッドが6台に増設され,鎮静を行いやすい環境となった.各ブースとも,天吊りで,酸素,二酸化炭素(CO2),吸引配管がなされるようになり,CO2送気を使用する際に,CO2ボンベが不要になり,よりCO2送気が使用しやすい環境になった.ESDやEMR,ERCPなどの処置内視鏡の他,大腸内視鏡検査では,ほぼ全症例でCO2送気を使用している.CO2送気の使用により,患者の苦痛の軽減や,治療による合併症の重篤化を防ぐ目的で貢献できているものと考えられる.
内視鏡システムは,オリンパス社が移動用含めて6台ある他,PENTAX社が2台,富士フィルム社が1台あり,6室に適宜配置しており,ICU,手術室などでの当センター外での検査,治療にも対応している.
治療内視鏡では,特にESD,EMRに力を入れており,拡大内視鏡検査,EUSなどの精査内視鏡も精力的に行っている.
ERCPやEUS-FNA,ドレナージ術など,胆膵系の処置検査も,術後腸管など難易度の高いものも含めて対応しており,幅広く,先進的な検査,治療が行えるよう尽力している.
本院は,地域医療に貢献すべく,救急体制を整えており,このため,緊急内視鏡は24時間対応しており,常時緊急止血等の処置が可能である.
(2016年4月現在)
医 師:18名(内視鏡指導医3名,内視鏡専門医10名,うち非常勤1名)
内視鏡技師:2名(Ⅰ種)
看 護 師:8名(常勤),1名(非常勤)
事 務 職:1名
そ の 他:2名
(2016年3月現在)

(2015年4月1日~2016年3月31日まで)

初期臨床研修(1年次)は消化器全般の知識習得と診療の実践の目的で,ローテート制で,消化器内科を2カ月間研修することになっている.初期研修後半(2年次)は,希望者のみ,消化器内科をローテートし,さらに臨床経験を積んでもらいながら,手技の指導も可能な範囲で行っている.
後期臨床研修(3~5年次)では,3年次に上部消化管内視鏡検査である程度経験を積んだ後,大腸内視鏡検査を開始している.各検査では,まず,上級医の指導のもと,検査を開始しており,トラブルなく,ステップアップできるよう配慮している.また,最初は検査時間が長くかかる傾向にあるため,鎮静剤投与患者から検査を開始している.内視鏡的止血術,EVL,EIS,ERCPなどの処置内視鏡は,上下部内視鏡検査である程度経験を積んだ後,徐々に開始している.ESDはハンズオンセミナーを院内外で定期的に開催しており,3年次からブタの切除胃を用いたトレーニングを行っており,実際の症例は主に5年次から開始している.
カンファレンス内視鏡カンファレンスを週2回行っており,若手医師の診断能力の向上に特に力を入れている.外科との合同カンファレンス,病理外科との合同カンファレンスを隔週で行っており,各科との連携を強めており,患者さんに最良の治療が受けられるよう配慮し,治療の結果が診療にフィードバックできるよう心がけている.
学会発表,論文各学会の総会地方会を含めて,多くの演題を投稿している.特に若手医師に,なるべく多くの機会を与えられるよう配慮し,海外学会でも発表する機会が得られており,2015年は,欧州消化器病学会週間(UEGW)で,若手医師がOral Free Paper Prizeを受賞するなど,3演題で各賞やTravel Grantを獲得している.
論文作成についても,精力的に行っており,英文誌,和文誌等に掲載されている.
内視鏡件数や鎮静件数の増加に伴い,検査・治療終了時間が延長傾向にある.特に,下部内視鏡検査・治療件数が増加しており,スコープや高周波装置の新規購入を行い,件数の増加に対応している.
当院では,ESDなどの治療内視鏡に特に力を入れており,治療件数は増加傾向にある.さらなる症例数の増加,若手医師の育成などに力を入れていきたい.
また,当院は女性医師が多く,スタッフ人数を増やすことにより,育児休暇等にも対応しているが,女性医師特有の悩みもあり,きめ細かな配慮が求められる.
看護師やコメディカルの不足がどこの病院でも課題となっており,当院では専任の看護師が,非常によく対応してくれてはいるものの,検査数の増加により,負担が増加している.検査治療件数の増加に伴い,看護師数も増員したが,さらに専門スタッフを増員し,より勤務しやすい診療体制をつくることが求められる.
当院では新病院への移行に伴い,画像ファイリングシステムを変更した.新しいシステムのため,種々の問題を生じているのが現状であるが,今後もメーカーと相談しながら,より良い作業環境をつくっていきたい.
当院は,地域の基幹病院として,専門性を有するスタッフを確保し,最新の診断・治療を提供できるよう今後も努めていきたい.