2017 年 59 巻 8 号 p. 1677-1681
当院は明治41年11月に京都衛戎病院として創設され,昭和20年12月に国立京都病院として厚生省に移管された.平成16年4月独立行政法人へ移行し,独立行政法人国立病院機構京都医療センターに改称した.政策医療においては,高度総合医療施設,内分泌・代謝疾患の高度専門医療施設,成育医療の基幹医療施設,がん・循環器・感覚器・腎疾患の専門医療施設に指定されている.地域医療においては,昭和59年12月に救急救命センターを設置,平成7年京都府エイズ治療拠点病院,平成19年地域がん診療連携拠点病院,平成27年京都府災害拠点病院に指定されている.
当院における消化器内視鏡の歴史は古く,昭和34年胃カメラ学会発足と同時期に始まり,昭和56年日本消化器内視鏡学会認定医制度発足当初より指導施設に認定され今日に至っている.現在の内視鏡室の原型は,昭和63年に病棟が新築された際にできあがった.新病棟の2階すべてを総床面積627m2の内視鏡センターとし,X線TV室,腹部エコー室,研究室なども設けられた.その後年月とともに,X線透視装置の老朽化や腹部エコーの生理検査部門への統合などにより一旦は規模を縮小した.しかし新棟建設により使われなくなった6階の手術室の一部を改装し,平成23年10月より内視鏡治療センターとして運用を開始した.このようにして現在は2つの階にわたる総床面積730m2の内視鏡センターとなっている.
組織内視鏡センターに専属の医師はいないが,消化器系の検査・治療は消化器内科および外科の医師が担当している.その他気管支鏡による検査・治療も呼吸器科の医師が行っている.看護師は看護部外来部門の所属となっている.
検査室レイアウト


前述のように,当内視鏡センターは2つの階に分かれており,2階を「内視鏡センター」,6階を「内視鏡治療センター」と称している.
内視鏡センターは総床面積315m2で,外来診療棟と隣接する第一病棟の2階部分に位置する.病院玄関や外来部門に近いため外来患者にとってアクセスしやすい.検査ブースは3つあり,主に上部消化管および大腸の検査および侵襲の小さい治療を行っている.消化器内科の医師全員の机がこのセンター内にあるため,科長から専修医まで役職によらず顔を合わす機会が多く,常に相談や議論をしやすい環境にある.
内視鏡治療センターは総床面積415m2で,手術部門とはドア1枚で隔てられるのみで,集中治療室とも近い.検査室はX線TV室1および2と内視鏡治療室の3室からなる.3室とも手術室であったことから,空気,酸素,笑気の中央配管があり,必要時に全身麻酔を施行することも可能である.また医療安全上の観点から,室内全景および内視鏡画像の動画記録が手術室と同様に中央管理されている.ここでは主に透視を要する手技,鎮静を要する手技,侵襲の大きい手技を行っている.
X線TV室1は約60m2あり,Cアーム型のX線透視装置が設置されている.内視鏡トロリー,モニター,電源および中央配管,手元カメラはいずれも天井吊り下げ式となっている.モニターは6画面からなり,内視鏡,透視,生体情報モニター,電子カルテの表示が可能である.X線TV室2は約36m2あり,オーバーチューブ型のX線透視装置が設置されている.内視鏡治療室は約36m2あり,EUS,ESD,および肝臓の穿刺手技に利用されている.内視鏡治療室の横には標本室があり,光学顕微鏡,実体顕微鏡,デジタルカメラ,記録用コンピューター,電子カルテ等を備え,ESDやEMRで得られた検体をここで処理する.
待合室にはトイレが男女各3室あり,前処置に利用される.また多目的トイレには収納式の処置台があり,トイレ内で浣腸を行える.リカバリーは3ブースあり,生体情報モニターは普段スタッフが多くいるX線操作室に表示されるようになっている.操作室は約36m2と広く,2つのTV室の間にあり,ゆとりをもって両室の見学が可能である.操作室にはカンファレンス室が隣接し,2つの大画面モニターの1つには各検査室の内視鏡画像を,もう1つには電子カルテ等を表示できる.洗浄室は各TV室とフットスイッチ式のドアを介して直通しており,スコープを真っ直ぐに置ける幅210cmのシンク2台を有する.スコープの洗浄・消毒は専任スタッフが行っており,洗浄管理システムにて洗浄履歴情報を管理している.
内視鏡ファイリングシステムは電子カルテと連携しており,電子カルテから内視鏡画像やレポートの参照が可能であり,ファイリングシステムからオーダー情報や病理結果の参照も可能である.内視鏡センターにあるデスクトップ端末には両者が相乗りしており,一つの端末でカルテもファイリングシステムも扱える.内視鏡センターには14台,内視鏡治療センターには10台のデスクトップ端末があり,円滑に業務を遂行できる.
(2017年1月現在)
医 師:指導医2名,専門医6名(健診センター兼任1名,非常勤2名を含む),その他8名(外科医師1名,非常勤1名を含む)
内視鏡技師:Ⅰ種4名
看 護 師:常勤8名(内視鏡技師4名を含む),非常勤1名
事 務 職:3名
そ の 他:洗浄員5名
(2017年1月現在)

(2016年1月~2016年12月)

当センターでは主として消化器内科が内視鏡診療を担当しており,内視鏡の研修は消化器内科研修の一環として行われている.
初期研修においては,消化器疾患における基本的な診療能力を身につけてもらうことはもちろん,消化器内視鏡の魅力を伝えることを心がけている.スコープに触れるのはモデルでの実習ぐらいであるが,多種多様な手技を見学することで内視鏡診断の深化,治療の発展を感じてもらうようにしている.消化器内科志望の場合は,2年目の選択研修期間に内視鏡研修を前倒しで開始することも可能である.
専門研修においては,3年間で上部消化管および大腸の検査,ポリペクトミー・EMR,ERCPによる検査と減黄処置,緊急内視鏡を独立して施行できるようにすることを目指す.
上部消化管内視鏡は1年次(卒後3年目)の4月から研修を開始する.座学やモデルでの実習を行った後,食道の引き抜き観察から始まり,段階を踏んで最終的には頭頸部から十二指腸まですべての操作・観察を一人で行えるようにする.ここまでの到達は半年程度を目安とし,その後は十分な診断能力の獲得と技術の向上を目指して経験を積んでいく.
大腸内視鏡は上部消化管内視鏡の操作が十分にできるようになる1年次の10月ぐらいから研修を開始する.大腸では引き抜き時の観察こそが重要であるとの考え方から,当センターでは引き抜きからの研修は行わない.挿入困難が予想されるなど不適切な症例は避け,挿入から研修を開始する.当初は制限時間5分で上級医に交替するが,被検者の疼痛や危険なスコープ操作など問題があれば早く交替する.制限時間は最終的には15分まで延ばす.盲腸に到達した症例では引き抜きも行うが,観察が不十分な場合は上級医に交替する.スコープ操作が安定してきたら小さい病変からポリープの切除にも取り組んでいく.3年次終了までに上級医のバックアップなしに検査とポリペクトミー・EMRができることを目指す.
ERCPは1年次の早期から介助に入るようにする.上部消化管内視鏡の挿入が安定してきたら受け持ち症例において十二指腸鏡の挿入を行い,カニュレーションも制限時間を設けて行う.通常割り当てられる症例だけでは研修の効率が悪いため,2年次では最短4カ月の胆膵研修期間を設け,集中的にERCPを経験する.カニュレーションから診断のための手技,減黄処置がおよそできるようにすることにより,胆管炎症例の緊急内視鏡に対応できるようになることが目標である.
緊急内視鏡については時間内・時間外にオンコール当番として上級医のバックアップのもとに経験を積む.どの程度まで手技を行ってよいかは日常の内視鏡研修の到達度で決められている.その他の内視鏡診療については,基本となる内視鏡研修の到達度や希望により適宜研修を行う.内視鏡診断についてはESDカンファレンスや胆膵カンファレンスを週1回ずつ行うほか,不定期に内視鏡フィルムカンファレンスを行っている.
まず建物・空間の問題点として,内視鏡センターが2箇所に分散していること,2階の内視鏡センターが限界に来ていることが挙げられる.2階と6階に分かれているため医師や看護師,スコープなどの機材を融通しにくくなっている.しかし外来からアクセスの良い2階,手術室と連携の良い6階という特色もあり,当面はこのままである.2階の内視鏡センターは昭和63年にできたものであり,内視鏡ブースは3つしかない.検査の予約は上部消化管で1~2週間待ち,大腸で2~3週間待ちとなっているが,件数を増やすには内視鏡ブースの拡充が必要である.また外来の検査でも鎮静のニーズが増加していることからリカバリーの確保も望まれる.これらについては現在計画中である.他,感染制御の点も現在の建物で可能な限り配慮はしているが,人や機材の動線を最適化するには将来の施設設計を待たざるをえない.
次に設備・備品の課題として,スコープをはじめとする機器類の更新が挙げられる.現行でも概ね不自由を感じることはないがいくらか改善の余地がある.第一に拡大機能付きスコープの充実である.現在上部では既知の病変の精査のみ拡大観察をしているが,通常の検査でも病変が疑われればその場で拡大観察をできるようにしたい.大腸では原則として拡大観察を行うが,機器の配置の関係で全例ではできていない.第二に大腸内視鏡における内視鏡形状観測装置の導入である.大腸内視鏡挿入の研修において現在は週1日のみ透視下で検査を行う日を設けているが,装置を導入すれば被曝の問題がなく,週1日に限らず補助を利用できる.第三にダブルバルーン内視鏡の更新である.当センターでは再建腸管症例のERCPが増加しており,その際はショートタイプのダブルバルーン内視鏡を使用している.現在は鉗子口径2.8mmのものを使っているが,可能な処置の内容に制約があり,鉗子口径3.2mmのスコープの導入が望まれる.以上については既に申請中であり,近いうちに実現可能と思われる.
最後に人的な課題としては,若手医師と内視鏡技師の育成が挙げられる.当センターは指導施設としての歴史があり,現在も内視鏡医の研修にとって十分な質と量の内視鏡診療を行っている.これを活かすべく今後は施設・設備の拡充とともに専修医の受け入れを拡げていきたい.また内視鏡技師の育成も重要である.資格のない看護師は異動によって入れ替わり,内視鏡技師は新しく配属される看護師の教育を常にしている状況である.新しい看護師は手技の内容によっては単独で介助に入れないため,並行して行える検査・治療に制限が生じる.看護師が定着し,資格を取っていけるようにすることも急務と言える.
今後も地域の中でがん診療や救命救急の中心的役割を担う病院の内視鏡センターとして高度な内視鏡診療を行っていくとともに,それを受け継いでいく人材を育て,消化器内視鏡の発展に貢献する内視鏡センターでありたい.