日本消化器内視鏡学会雑誌
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70~79歳のメディケア受給者に対する大腸内視鏡検診が結腸直腸癌予防に及ぼす効果:前向き観察研究
阿部 雅則
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2017 年 59 巻 8 号 p. 1682

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【背景・目的】現在までに大腸内視鏡検診のランダム化比較試験は完了しておらず,現在行われている試験では75歳以上の受診者は除外されている.本研究では,70~74歳,75~79歳の高齢者に対する大腸内視鏡検診の結腸直腸癌(CRC)予防に及ぼす効果と安全性を明らかにすることを目的とした.

【研究デザイン】米国で行われた大規模な人口ベースの前向き研究である.観察データを用いて,大腸内視鏡検診の有無による2群を比較した.

【対象と評価方法】CRCの平均的なリスクがあり,過去5年間に大腸癌の診断または検診のための大腸内視鏡検査を施行したことがない70~79歳のメディケア受給者(2004年~2012年)1,355,692名を対象とした.8年間のCRCリスクと,有害事象の30日リスクを評価した.

【結果】70~74歳のメディケア受給者では,CRCの8年間リスクは大腸内視鏡検診群で2.19%(95% CI,2.00%-3.00%),検診なし群で2.62%(CI,2.56%-2.67%)であった.(絶対リスク差 -0.42%[CI,-0.24%--0.63%]).75~79歳では,CRCの8年間リスクは大腸内視鏡検診群で2.84%(95% CI,2.54%-3.13%),検診なし群で2.97%(CI,2.92%-3.03%)であった.(絶対リスク差 -0.14%[CI,-0.41%-0.16%]).大腸内視鏡検査の30日間の有害事象リスクは70~74歳で1,000人あたり5.6件(CI,4.4-6.8),75~79歳で10.3件(CI,4.4-6.8)であった.

【本研究の限界】CRCによる死亡率は不明であること.

【結語】大腸内視鏡検診は70~74歳のCRC予防に適度の効果があるが,75歳以上の高齢者では有用性がより少ない可能性がある.大腸内視鏡検査の有害事象リスクは低かったが,高齢者ではより高かった.

《解説》

米国では,2017年の結腸直腸癌の新規罹患者は年間135,430人,死亡者は50,260人と予測されている 2.日本でも高齢者人口の増加に伴い,大腸癌罹患患者は増加の一途を辿っている.国立がん研究センターがん対策情報センター 3によると,2016年には年間147,200人が大腸癌に罹患し,51,600人が死亡することが予測されており,欧米とほぼ同等である.結腸直腸癌は早期発見・早期治療により死亡率減少が期待される癌腫の一つであることから,大腸内視鏡検査のもつ役割は重要と考えられている.

本研究 1では,大規模な人口ベースの観察データを用いて70~79歳の高齢者に対する大腸癌検診目的の大腸内視鏡検査の有用性を検討した.70~74歳においてはCRCリスクを下げるが,75~79歳では有意な差はみられなかった.米国予防医学作業部会(U.S. Preventive Service Task Force:USPSTF)は,50~75歳まではルーチンのCRCスクリーニングを行い,76~85歳までは個々に応じてCRCスクリーニング行うことを推奨している 4.本研究の結果は,USPSTFの勧告を支持するものと考えられる.しかし,70歳以上の高齢者の健康状態は個人差が大きいため,一般論として癌検診の必要性を議論することは難しい側面もある.今後日本ではさらに進行する人口の高齢化に対応していかなければならない.癌予防という観点のみならず,医療経済という観点からも重要な課題の一つではないかと思われる.

文 献
 
© 2017 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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