2020 年 62 巻 12 号 p. 3116-3118
昭和14年に傷痍軍人広島療養所としてスタートした国立療養所広島病院は,国立病院療養所の再編成計画により,平成13年12月1日に国立療養所畑賀病院と統合し新病院として発足した.当院は,政策医療であるがん,循環器病,呼吸器疾患,内分泌・代謝性疾患の専門医療施設として位置づけられ,これらの診療機能を果たすべく,建物,医療機器の整備,医師をはじめとする職員の増員が図られた.平成16年4月1日,国立病院・療養所は独立行政法人に移行し,病院名称を「独立行政法人国立病院機構東広島医療センター」と改称した.平成27年4月1日より独立行政法人改革により特定独立行政法人(公務員型)から,中期目標管理型の独立行政法人(非公務員型)となった.
組織外来部門の一部である.専任スタッフはおらず,内視鏡検査と治療は消化器内科が担当している.看護師は外来部門に属し,内視鏡技師資格を有する者も含まれる.
検査室レイアウト
内視鏡室は,当院2階の外来部門,消化器内科外来の向かいに位置し,外来からのアクセスが良好な場所にある.内視鏡室は2箇所の内視鏡検査ブース,消化器内科外来と共通の待合エリア,咽頭麻酔コーナー,3つの洗浄機付きトイレを有する大腸前処置室,内視鏡対応の透視室,リカバリーコーナー,診察室,洗浄コーナーで構成され,総面積は258.43m2となる.患者エリアとスタッフエリアを区別し,スタッフエリアでは内廊下を設けて各室をスムーズに移動できるように配慮した設計としている.外来患者で鎮静下に内視鏡検査を行った後には共有の中央処置室内リカバリー室も利用している.
各内視鏡検査ブースはボンベを利用したCO2送気が可能で下部消化管内視鏡検査,時間を要する精査,内視鏡治療手技を行う際には原則CO2を使用して被検者の苦痛軽減に努めている.また,各内視鏡検査ブースに高周波装置を備え,内視鏡治療,止血処置を伴う緊急内視鏡が並列で対応可能な環境を整えている.
内視鏡対応の透視室には内視鏡システムを常設しており内視鏡検査・治療と平行して胆膵内視鏡検査・治療,消化管拡張術,消化管ステント留置術,EIS,小腸内視鏡検査を行っている.鎮静・鎮痛剤はジアゼパム,ミダゾラム,ペンタゾシンなどを症例に応じて使用し,患者に苦痛の少ない検査,治療を心がけている.内視鏡画像は画像ファイリングシステムで管理しており,院内すべての電子カルテより画像,レポートが閲覧可能である.
(2020年4月現在)
医師:消化器内視鏡学会 指導医1名,消化器内視鏡学会 専門医5名,その他スタッフ1名
内視鏡技師:Ⅰ種4名
看護師:常勤9名
その他:洗浄員4名
(2020年4月現在)
(2019年4月~2020年3月まで)
研修医は,消化器内科カンファレンス,外科,病理合同のカンファレンスに参加し消化管検査(消化器内視鏡検査,消化管造影検査)など学習し,治療方針を学び,病理結果とともに対比し診断能力の向上を図っている.
初期研修医に対しては,1年次では将来,他の分野に進んでも消化器内視鏡検査の必要性を判断できるように内視鏡検査の適応,基本的な流れについて研修している.特に代表的消化器疾患の経験に重きを置いている.2年次には消化器内科を選択した研修医には上級医の指導のもと上部内視鏡検査の引き抜きから開始し,観察,記録を経験する.上達スキルによっては,挿入をする機会も経験することとしている.
消化器内視鏡,消化器病の専門医を目指す後期研修医には,咽喉頭を含め消化管の解剖が理解でき,抜去,十二指腸への挿入が問題なくできるようであれば,上部消化管内視鏡の挿入を行い,下部内視鏡検査は初め引き抜きの検査を経験しスコープの操作,観察を習得し,問題なければ指導医とともに肛門挿入から検査を時間を区切り開始している.
検査後には指導医とディスカッションし挿入について痛みのない検査ができるようスキルアップしている.
また,同時に治療内視鏡(内視鏡止血術,EMR,ESD,EUS,FNA,ERCP,EST,EIS,EVLなど)の介助に参加しその手技,方法を理解している.
医師4年目からは,修練スキルによるが消化器治療内視鏡を指導医のもと経験し,さらなる消化器内視鏡の技術,知識の向上に務めている.
当院は広島中央医療圏(人口約22万人)の中核病院である.広島中央医療圏の広範囲から患者さんは来院され,また,地域がん診療連携拠点病院の役割を担っている.スクリーニング内視鏡検査から治療内視鏡まで地域のニーズはますます増加している.その状況の中では,現在スタッフ(消化器内科医師6名)はマンパワー不足である.また,内視鏡室も透視室にあるものを含め3台という少ない台数で検査を行っている.
今後も安全で安心できる内視鏡検査のもとコメディカル,医師,内視鏡機器ともに整備に一層力をいれていく予定である.
また内視鏡治療の高度化に伴い治療内視鏡など鎮静下での消化器内視鏡検査も増加している.今後は現在あるリカバリーベッドの体制では不足するため,増強していく必要性があると思われる.その上また,現在JEDへの対応も控えており研修医を受け入れていくためにはJEDへの対応を含め環境整備を進めている.
今後,広島中央医療圏での内視鏡治療に貢献できるよう人員の整備,機器の整備を進め内視鏡室のパワーアップを進めていく予定である.