日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
国家公務員共済組合連合会広島記念病院
赤木盛久(内視鏡センター長,診療部長)  〒730-0802 広島県広島市中区本川町一丁目4番3号
西山 宗希赤木 盛久
著者情報
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2020 年 62 巻 12 号 p. 3119-3121

詳細

概要

沿革・特徴など

当院は1947年に戦災者救護のために開設され,1950年に国家公務員共済組合連合会の直営病院となった.広島市の中心にあり,広島のシンボルである平和記念公園から1km以内の近距離に位置している.2009年に地域医療支援病院に承認され,主として消化器疾患について専門性の高い中規模病院として地域医療に貢献してきたが,2016年5月より診療体制を一新し,消化器センターを設立した.消化器センターでは内科や外科などの垣根を越え,疾患ごとに専門医が柔軟にアプローチを行うことが可能となった.さらに,消化器内科・外科,放射線科,病理診断科の連携が強くなったため,消化器疾患の内科初診から外科手術までの流れがきわめて流暢に行われるようになった.また,内視鏡検査・治療の増加に伴い2019年2月に新たな内視鏡センターを開設して,地域の消化器内科診療のニーズに応じている.

組織

内視鏡センターは中央検査科とは独立して,病院内の医療サポート部門の一部として位置づけられている.センター長のもと,内視鏡検査・治療は消化器内科医師が行っている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

これまでの内視鏡・腹部超音波室は本館2階の内科外来に近接して配置された約100m2の手狭なものであったが,内視鏡検査・治療の増加に伴い2019年2月に本館4階に移転・拡充し内視鏡センターとして稼働している.

総床面積は移転前の約5倍となり,検査室4部屋,専用トイレ8室,多目的トイレ1室,診察室2室,超音波検査室などを備え,前処置室(ラウンジ)とリカバリールームに広大なスペースを確保し,広い空間の中で高度な検査・治療を提供することが可能となった.希望者には問題がない限り積極的に鎮静を行い下部内視鏡では全例CO2送気を使用し,安心で安楽な検査を心がけている.

スタッフ

(2020年4月現在)

医師:消化器内視鏡学会 指導医3名,消化器内視鏡学会 専門医1名,その他スタッフ2名,研修医など1名

内視鏡技師:Ⅰ種2名

看護師:常勤6名,非常勤1名

事務職:3名

その他:内視鏡洗浄員1名

設備・備品

(2020年4月現在)

 

 

実績

(2018年4月~2019年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当院は協力型初期研修病院(外科系)のため,消化器内科研修は後期研修の3年間内科に常勤する医師が対象であり,広島大学病院内科専門研修プログラムに応じた指導環境を整備している.新専門医制度への移行に伴いNEXUSファイリングシステムのバージョンアップを行いJEDへの参加も果たしている.

当院の内視鏡指導医(日本内視鏡学会指導医,専門医)は,日本消化器内視鏡学会監修の「消化器内視鏡ガイドライン」に基づき指導を行う.内視鏡指導責任者は,指導医の指導内容や状況を把握し,必要に応じて十分な補助をすることで研修が円滑に行われるようにする.指導医は,研修する者の行為によって患者に不利益が生じないように細心の注意を払う義務を負う.

最初に内視鏡検査の適応と禁忌,セデーションに関する知識,モニタリングの方法,内視鏡洗浄・消毒の流れ,内視鏡機器の構造・とり扱い等について習得させる.マンパワー不足があり若手の早期戦力化を図るため,最初の数カ月で上部消化管内視鏡検査が単独で実施可能なレベルをめざしている.指導医のもと,引き抜きから開始しスキルに応じて挿入を経験させていく.挿入から抜去まで一連の検査手技が円滑に行えると指導医が判断すれば,大腸内視鏡検査を上部と同様のステップで開始させる.ただし時間を限定しておき超過した際や患者から疼痛の訴えがある場合には指導医と交代させる.無理なく盲腸への挿入が可能になり,少なくとも数カ月の大腸内視鏡検査を実践した後に,EMR,ESD,ERCP,止血術などの内視鏡治療の介助をさせる.指導医が許可した者は,EMRや止血術を適宜指導のもとで実施していく.スタッフの人数の割には内視鏡症例が豊富であるため,比較的短期間で多くの症例が経験可能となっている.

週1回の外科,放射線科との合同カンファレンスにて,内視鏡治療もしくは外科治療適応となる消化器患者の治療方針につき協議を行い,月に1回,病理診断科も交えたcancer boardで術後症例を主体に活発なディスカッションを行っている.

学会認定施設に関しては,当院は日本内科学会認定教育関連病院,日本消化器内視鏡学会専門医制度指導施設,日本消化器病学会専門医制度認定施設,日本胆道学会指導施設となっており,積極的な学会活動を行っている.

現状の問題点と今後

従来の約5倍のスペースとなった内視鏡センターの開設により,長年の懸案事項であった前処置のためのスペース不足,手狭な超音波検査室,リカバリーベッドやトイレの不足といった問題がほぼ解決された.一方でセンター開設に伴い検査室を3部屋から4部屋に増設したにもかかわらず,新専門医制度の影響もあり内視鏡検査医は減少傾向にある.必然的にマンパワー不足となっているものの,広島大学からの人的派遣による協力によりなんとかまかなっているのが実情であり,紙面をもってあらためて感謝申し上げたい.今後も診断や技術のレベルを高水準で維持していき,かつ安全で安楽な医療を提供し続けるよう,内視鏡センターの環境整備に努めていきたい.

 
© 2020 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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