日本消化器内視鏡学会雑誌
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胃がん発生と死亡に関するH. pylori除菌とビタミン,ガーリックの効果:無作為化介入試験のフォローアップ
小野 尚子
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2020 年 62 巻 12 号 p. 3122

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抄録

【背景と目的】H. pylori除菌とビタミン,ガーリックによる胃がん死亡抑制効果をエンドポイントとして,1995年に中国の山東省で無作為化介入試験が実施された.約15年経過観察期間では,除菌で胃がんの発生は減少したものの,除菌による胃がん死亡の抑制とサプリメントの効果に有意な結果は得られなかった.本研究は,その後の追跡結果である.

【方法】山東省の13の村に居住する35-64歳を対象とした.上部内視鏡検査(EGD)と生検,採血を施行された対象のうち,H. pylori陽性者は除菌とビタミン,ガーリックの介入(各7年間服用)の有無で計8群に,H. pylori陰性者はビタミンとガーリックの有無で4群に振り分けられた.EGDは1999年と2003年は全員に実施され,2003年に腸上皮化生やdysplasiaを認めたものを対象に2007年にもEGDが行われた.2008年から2017年は,腸上皮化生やdysplasiaが強い人を対象に半年ごとのEGDが実施された.死亡の確認はナショナルシステムや大学スタッフが村を訪問し情報を収集した.

【結果】1995年から2017年の観察期間中に151例の胃がんが発生し,94名が胃がんで死亡した.除菌による胃がん発生の抑制効果はオッズ比で0.48(95%CI:0.32-0.71),ビタミンは0.64(0.46-0.91)で有意な抑制効果を認めた.一方,ガーリックでは抑制効果はなかった.死亡においては,いずれも有意な抑制効果を認めた(除菌:ハザード比0.62(95%CI 0.39-0.99),ビタミン:0.48(0.31-0.75),ガーリック:0.66(0.43-1.00)).これらの介入と他の癌の発生や心血管系イベントには関係がなかった.

【結語】H. pylori除菌と7年間のビタミンとガーリックの投与は22年以上の長期にわたり有意に胃がんの死亡リスクを減少させた.除菌とビタミンの摂取は胃がんの発生も有意に抑制した.

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© 2020 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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