2023 年 65 巻 12 号 p. 2421-2429
内視鏡機器の発展に伴い,Narrow band imaging(NBI)拡大内視鏡,さらには顕微鏡と同レベルの400-500倍で観察が可能な,超拡大内視鏡(Endocytoscopy:EC)が開発され,その有用性が食道癌,大腸癌で報告されている.一方で,胃癌の診断においてECの有用性を報告した文献は少なく,NBIと併用したEC-NBIの有用性に関しては不明であった.そこで,胃癌の診断におけるEC-NBIに関するわれわれの報告をもとに,胃癌の診断におけるEC-NBIの手技のコツと有用性について解説する.
Advances in endoscopic equipment has led to the development of magnifying endoscopy with narrow band imaging (ME-NBI). Furthermore, ultra-magnifying endoscopy (Endocytoscopy: EC), which enables observation at 400-500 x, the same magnification as that of microscopes, has been developed, and its usefulness in the diagnosis of esophageal and colorectal cancer has been reported. However, there are few reports on the usefulness of EC in the diagnosis of gastric cancer, and the usefulness of EC-NBI, which is a combination of EC and NBI, is unknown. Therefore, based on our report on EC-NBI use in the diagnosis of gastric cancer, I discuss tips on the EC-NBI technique and the diagnosis of gastric cancer.
胃癌は世界で死亡率の高い癌の一つであるが,内視鏡機器の進歩により,早期に発見される例が増え,死亡率は低下傾向である 1).内視鏡機器の進歩の一つとして,狭帯域光(Narrow band imaging: NBI)を併用した,NBI併用拡大内視鏡(Magnifying endoscopy with narrow band imaging:ME-NBI)が挙げられる 2),3).通常観察の80-100倍で観察することが可能であり,粘膜の表面構造,血管走行の整,不整を評価することで,癌,非癌を診断するVessel plus Surface(VS)classificationを用いたME-NBIは,胃癌診断の標準検査である 4).その後,拡大倍率が顕微鏡と同レベルの400-500倍で観察が可能な,超拡大内視鏡(Endocytoscopy:EC)が開発された.メチレンブルー,クリスタルバイオレットを用いて粘膜の染色を行うことで,細胞の核異型,構造異型を評価することが可能となり,食道癌,大腸癌の診断において,その有用性が報告されている 5)~7).胃癌の診断においても有用性が報告されている一方で 8),9),胃は粘液が多いため,粘液付着により染色が難しい,染色が均一にならずムラができてしまう,染色に時間を要する,といった懸念が存在し,普及に至っていないのが現状である.
その後,大腸癌の診断において,ECにNBIを併用する,NBI併用EC(Endocytoscopy with narrow band imaging:EC-NBI)の有用性が報告された 10).胃癌の診断におけるEC-NBIの有用性についての報告はなかったため,われわれは胃癌の診断において,標準検査であるME-NBIとEC-NBIの診断性能の比較を行ったところ,詳細は後述するが,正診率,感度共にEC-NBIの方が有意に高値であった 11).また,ME-NBIでは粘膜の表面構造所見,血管所見の評価が必要だが,EC-NBIでは血管所見のみの評価で診断可能であることが分かり,ME-NBIよりも診断体系が簡便であることが示唆された 12).しかし,現段階では,EC-NBIによる胃癌の診断は,日常診療において普及には至っていない.そこで,本稿ではEC-NBIの普及につながることを期待して,胃癌の診断におけるEC-NBIの手技のコツと有用性について解説する.
使用するスコープは上部消化管汎用ビデオスコープ OLYMPUS GIF-H290ECである.挿入前の準備として,従来の拡大内視鏡と異なり,先端フードは装着しない.これは,従来の拡大内視鏡では,強拡大観察の際に,ピントを合わせるために,病変とスコープ先端の間に2mm程度の距離が必要であり,先端フードを装着するが,ECでは病変とスコープ先端を密着させる必要があるため,先端フードの装着は不要である(Figure 1).通常スコープと同様に胃内に挿入し,観察したい病変を発見した際に,NBIに切り替える.従来の拡大内視鏡と同様の拡大ズームレバー操作により,非拡大観察→拡大観察→EC観察の連続的な観察が可能であるため(Figure 2),まず非拡大観察で存在診断,弱拡大で範囲診断を行う.その後,病変にスコープ先端を密着させて,徐々に拡大ズームレバーを最深部(最大倍率)まで下げる.病変にスコープ先端を密着させるため,心拍動,呼吸性変動,体動の影響はあまり受けないが,それらの影響を受ける場合は少し強めにスコープを病変に押し当てることで,動きが軽減でき,観察に有用である.ピントを微調整し,血管が鮮明となる部位で観察を行い,ME-NBIにおけるVS classification 3),4)のMicrovascular patternの評価と同様に,血管所見として血管の拡張,蛇行,口径不同,形状不均一を評価し,regular,irregular,absentに分け,irregularであるものを胃癌と診断する.なお,血管周囲に白色調のラインによる縁取りが認められるが,これは腺腔であり 13),細胞の表面構造所見を意味するが,評価は不要である(評価不要である理由は,後述するⅣ EC-NBIの診断体系で詳細を述べる).

被写体に対する同距離での拡大観察像の比較1(オリンパス株式会社より提供).
スコープ先端から被写体までの距離を0mmに設定する場合,GIF-H290Zではレバーを最大まで押し下げても,画像のピントが合わず観察困難である.一方でGIF-H290ECではレバーを最大まで押し下げることで,最大倍率(520倍)の観察が可能となる.

Endocytoscopyの製品概要(オリンパス株式会社より提供).
従来同様の拡大ズームレバー操作により,通常観察→拡大観察→EC(Endocytoscopy)観察の連続的な観察が可能.
胃癌の標準検査であるME-NBIとEC-NBIの診断性能の違いを明らかにするために,以前われわれは,胃癌102症例106病変のME-NBIとEC-NBIそれぞれの画像に対する,全国の内視鏡医(45施設61名)による診断性能の比較を行った 11).適格規準は,ME-NBI,EC-NBIの両方で癌部の画像が撮影された症例,対象となる癌部と同一症例における癌部最口側に隣接する非癌部位がME-NBI,EC-NBIの両方で画像が撮影された症例とした(Figure 3).除外規準は,ME-NBI,EC-NBIのいずれか一方でも画像が不鮮明で評価が困難である症例とした.胃癌,非癌の判定はME-NBIによる診断で使用されているVS classificationを用いて行い,EC-NBIにおいても,それを応用した.診断基準はMicrovascular pattern(血管所見),Microsurface pattern(細胞の表面構造所見:腺腔)それぞれにおいて,Regular,Irregular,Absentの判定を行い,どちらか一方でもIrregularと判定された場合を胃癌とし,それ以外を非癌とした(Figure 4).また,診断性能は正診率,感度,特異度とし,全内視鏡医による評価,ME-NBIの研修を受けた内視鏡医および受けていない内視鏡医に分けた評価を算出した.

胃癌部,非癌部のMagnifying endoscopy with narrow band imaging(ME-NBI),Endocytoscopy with narrow band imaging(EC-NBI)による画像(Horiuchi Y, et al. 11)より許可を得て,転載).
a:白色光観察画像.ESD前に病変周囲のマーキングを行った.青四角は病変の最口側部分の癌部非癌部の境界部分.
b:Narrow band imaging(NBI)非拡大観察による病変の最口側部分の癌部非癌部の境界部分の画像.緑四角が非癌部,赤四角が癌部.
c:非癌部のMagnifying endoscopy with narrow band imaging(ME-NBI)画像.血管,表面構造共にirregular所見を認めない.
d:非癌部のEndocytoscopy with narrow band imaging(EC-NBI)画像(ME-NBI画像と同一部位).血管,表面構造共にirregular所見を認めない.
e:癌部のME-NBI画像.中央から左下にかけて,血管の口径が異なるirregular所見を認める.
f:癌部のEC-NBI画像(ME-NBI画像と同一部位).全体に口径が異なり,一部拡張した形状が不均一な血管が蛇行している(血管のIrregular所見).

Magnifying endoscopy with narrow band imaging,Endocytoscopy with narrow band imagingにおけるVessel plus Surface classification(Horiuchi Y, et al. 11)より許可を得て,転載).
Vessel plus Surface(VS) classificationはMagnifying endoscopy with narrow band imaging (ME-NBI)による癌,非癌の鑑別に関する分類 9)であり,Microvascular pattern,Microsurface patternからなっており,それぞれの所見においてirregularを認めた場合に癌と診断する.今回ME-NBIだけでなくEndocytoscopy with narrow band imaging(EC-NBI)に関してもこの分類を応用して評価を行った.
ME-NBI
Microvascular pattern
a:均一な網目状血管を認める(Regular).
b:局所で拡張し,口径が異なる血管が蛇行している(Irregular).
c:血管所見を認めない(Absent).
Microsurface pattern
d:均一な表面構造を認める(Regular).
e:大小不同の不均一な表面構造を認める(Irregular).
f:表面構造を認めない(Absent).
EC-NBI
Microvascular pattern
g:均一な形状の血管を認める(Regular).
h:局所で拡張し,口径が異なる形状が不均一な血管が蛇行している(Irregular).
i:血管所見を認めない(Absent).
Microsurface pattern
j:均一な表面構造を認める(Regular).
k:大小不同の不均一な表面構造を認める(Irregular).
l:表面構造を認めない(Absent).
全内視鏡医において,正診率(78.8% vs. 72.2%,p<0.0001),感度(82.1% vs. 64.2%,p<0.0001),特異度(88.7% vs. 83.0%,p=0.2983),ME-NBI研修を受けた内視鏡医において,正診率(84.0% vs. 72.2%,p<0.0001),感度(80.2% vs. 63.2%,p=0.0001),特異度(89.6% vs. 87.7%,p=0.4113),ME-NBI研修を受けていない内視鏡医において,正診率(76.7% vs. 71.7%,p=0.0041),感度(84.5% vs. 68.4%,p=0.0049),特異度(77.4% vs. 78.3%,p=0.7183)といずれの群の正診率,感度においても,EC-NBIはME-NBIと比較して有意に高値であった.なお,特異度はいずれの群においても,有意差を認めなかった.
加えて,現行の胃癌の診断において最も診断性能が高いと考えられるME-NBIの研修を受けた内視鏡医のME-NBIの診断性能と,ME-NBIの研修を受けていない内視鏡医のEC-NBIの診断性能を比較したところ,正診率(72.2% vs. 76.7%,p=0.0176),感度(63.2% vs. 84.5%,p=0.0003),特異度(87.7% vs. 77.4%,p=0.2293)とやはり正診率,感度においてEC-NBIはME-NBIと比較して有意に高値であった.
内視鏡はスクリーニング検査であることから,病変を検出する感度が最も重要である.その感度を含めた診断性能がEC-NBIの方が標準検査であるME-NBIよりも高く,さらにはME-NBIの研修歴のない内視鏡医でもEC-NBIによる診断性能はME-NBIの研修を受けた内視鏡医のME-NBIの診断性能よりも高いことが示唆され,EC-NBIを用いた胃癌の診断性能は,実臨床において多くの内視鏡医に対して有益であると考えられる.
EC-NBIによる診断体系は定まったものがないため,Ⅱで示した研究では,ME-NBIの診断体系であるVS classification 3),4)を用いた.一方で,Microvascular pattern,Microsurface patternのうち,片方で診断できる可能性も存在する.よって,Ⅱで示した研究の事後解析として,EC-NBIにおいて,Microvascular patternのみ,Microsurface patternのみ,両方を用いた場合の,診断性能の比較を行った 12).
適格規準は,EC-NBIで癌部の画像が撮影された症例,対象となる癌部と同一症例における癌部最口側に隣接する非癌部位がEC-NBIで画像が撮影された症例とした.除外規準は,EC-NBIにおいて不鮮明で評価が困難である症例とした.規準を満たした胃癌症例110例114病変の画像を用いて,Microvascular patternのみ,Microsurface patternのみ,両方を用いた場合の,45施設61人の内視鏡医による診断性能(正診率,感度,特異度)を病変ごとに算出し,内視鏡医をME-NBI研修の有無で群分けして診断性能を集計した.診断基準はⅡで示した研究と同様である.加えて,EC-NBIによる診断に汎用性があるか(過半数の内視鏡医の診断一致が得られるか)判断するために,内視鏡医間の診断一致割合についても検討を行った.診断一致割合は,内視鏡医の全回答に対する内視鏡医の最多回答の割合を各病変で算出し,全病変における中央値と定義し,ME-NBI研修を受けた内視鏡医群,受けていない内視鏡医群それぞれで,Microvascular pattern,Microsurface patternに分けて算出した.
診断性能は,ME-NBI研修を受けた内視鏡医群における正診率は91.7%,76.3%,91.2%(Microvascular patternのみ,Microsurface patternのみ,両方の順,以下同様),感度は87.7%,54.4%,87.7%,特異度は95.6%,98.3%,94.7%であった.ME-NBI研修を受けていない内視鏡医群における正診率92.5%,67.5%,92.1%,感度は89.5%,38.6%,89.5%,特異度は95.6%,96.5%,94.7%であった.ME-NBI研修を受けた内視鏡医群におけるMicrovascular patternのみとMicrosurface patternのみの比較では,正診率(p<0.0001),感度(p<0.0001)で有意差を認めたが,特異度では有意差を認めなかった.ME-NBI研修を受けなかった内視鏡医群でも同様に,正診率(p<0.0001),感度(p<0.0001)で有意差を認めたが,特異度では有意差を認めなかった.一方で,Microvascular patternのみとMicrovascular pattern,Microsurface pattern両方の比較では,ME-NBI研修を受けた内視鏡医群の正診率,感度,特異度のいずれも有意差を認めず,ME-NBI研修を受けていない内視鏡医群でも同様であった.
診断一致割合は,ME-NBI研修を受けた内視鏡医群のMicrovascular patternは84.8%(四分位範囲:72.7-93.9%),Microsurface patternは69.7%(四分位範囲:51.5-87.9%)であった.受けていない内視鏡医群のMicrovascular patternは75.0%(四分位範囲:60.7-89.3%),Microsurface patternは58.9%(四分位範囲:47.3-75.0%)であり,Microsurface patternの四分位範囲の下限が過半数を割っていた.
以上から,Microvascular patternによる診断は診断一致率において,ME-NBI研修を受けた内視鏡だけでなく,受けていない内視鏡医でも過半数を超えており,汎用性があると考えられた.また,Microvascular patternのみによる診断性能は,Microsurface patternのみと比較して有意に高く,Microvascular pattern,Microsurface pattern両方を用いた診断性能と差がなかった.Microsurface pattern で観察しているのは腺腔である 13).スコープ先端の病変への圧迫の程度により,腺腔の形状が変化し,regular,irregularといった見え方が安定しないため,評価が難しくなることが,Microsurface patternが診断性能への上乗せ効果に寄与しなかった理由として考えられる.以上から,診断体系として,Microsurface patternによる診断は省略可能であり,Microvascular patternのみで診断できる可能性が示唆された.ME-NBIと比較して,EC-NBIは診断体系がシンプルであるにも関わらず,高い診断性能が得られる可能性がある点で,日常診療において有望な検査といえる.
Ⅲ EC-NBIの診断性能,Ⅳ EC-NBIの診断体系の項で述べたが,EC-NBIはMicrovascular patternのみで診断ができる.これにより,ME-NBIで必要である,Microsurface patternの評価のための鮮明な画像を撮影する必要がないため,撮影および診断のための時間の節約が可能である.さらに,ME-NBIで高精度の診断を行うためには,その診断法の習得の難しさから専門施設で研修を受ける必要があるが,EC-NBIでは,ME-NBIの研修を受けていなくても高精度の診断が可能であるため,ME-NBIよりも診断性能において恩恵を受ける内視鏡医が多くなる.また,ME-NBIでは先端フードが必要であるが,EC-NBIでは先端フードを準備する必要がないため,スクリーニング検査中に拡大が必要な病変を発見した場合でも,先端フード装着のために内視鏡を抜去する必要がなく,すぐに超拡大観察が可能となる.加えて,ME-NBIにおける先端フードによる擦過が原因の出血も,EC-NBIでは先端フードを装着しないため回避可能であり,出血のために病変の評価が不可能となる可能性が低い.さらに,ME-NBIでは,焦点を合わせるために,病変との間にある程度距離が必要であり,心拍動,呼吸性変動や体動の影響を強く受けるが,EC-NBIでは,焦点を合わせるための病変との間の距離は不要で,先端を直接病変に押し当てて観察するため,心拍動,呼吸性変動,体動の影響を受けることが少ない.影響を受ける場合であってもスコープを少し強めに病変に押し当てることで,心拍動,呼吸性変動,体動の影響が軽減できる.以上のことから,ME-NBIは限られた専門施設における胃癌の精査の際に用いられることが多いが,EC-NBIはそのような専門施設に加えて,多くの場合で鎮静剤を用いていない健診施設やクリニックにおいても,病変検出,診断に有用である可能性があり,ME-NBIと比較して汎用性が高いと考えられる.
・粘膜の染色を行うECとの比較胃粘膜の染色を行ってECを用いて病変の観察を行う場合,病変全体を均一に染色する必要がある.しかし,もともと胃粘膜は粘液産生が多いことに加えて,染色液を散布することが粘膜への刺激となり,粘膜からより多くの粘液が産生され,病変全体に均一に染色液が散布されず,ムラができてしまうことが多い.また,染色に時間を要するため,日常診療として行う場合,検査時間がひっ迫してしまう可能性がある.さらに,病変の診断を行う際に,細胞の核異型,構造異型の評価といった病理組織学的診断と同様の知識を要するため,診断できる内視鏡医が限られてしまう.一方でEC-NBIでは,染色は不要であり,粘液産生が染色液により助長されることはないため,鮮明な画像が得られやすい.また,ボタン一つで白色光からME-NBIに切り替え可能であり,染色に要する時間が不要であるため,その分検査時間は短時間となる.また,細胞の核異型,構造異型を評価しないことから,病理組織学的診断の知識は不要であり,直感的に血管所見を判定することで良好な診断性能を得ることができるため,より多くの内視鏡医において診断が可能である.このように,粘膜の染色を行うECと比較した場合でも,EC-NBIは長所が多く,汎用性が高いと考えられる.
・他拡大スコープとの仕様比較ME-NBIのために用いられている最新のスコープは,上部消化管汎用ビデオスコープ OLYMPUS GIF-H290ECやGIF-XZ1200が挙げられるが,いずれも先端部径は9.9mmであるのに対して,GIF-H290ECは9.7mmであるため,挿入時の患者負担がわずかではあるが軽減されると考えられる(Figure 5).

GIF-H290ECとGIF-H290Zの製品仕様の比較(オリンパス株式会社より提供).
GIF-H290ECはGIF-H290Zと比較して,拡大倍率が高く,先端部径,挿入部径,鉗子チャンネル径が細い.
未分化型早期胃癌において,癌が表層に露出せず,粘膜中層に存在する病変が存在する 14).ME-NBIで観察すると,周囲の非癌粘膜と比較して,腺管と腺管の間が広がっているように観察される(窩間部開大)が 15),16),EC-NBIでは構造所見の評価が困難であるため,窩間部開大の評価が難しい.このような症例は特にHelicobacter pylori未感染である例で多い 17),18).実際にⅣ EC-NBIの診断体系で紹介した検討で,内視鏡医が癌,非癌の診断において誤診した14病変と正診であった100病変で,病変の特徴について多変量解析を用いて比較を行ったところ,肉眼型が平坦型(オッズ比12.1倍,p=0.025),Helicobacter pylori未感染(オッズ比17.3倍,p=0.0011)が誤診の独立した危険因子であり,いずれも未分化型癌であった 12).Figure 6に実際に誤診した病変の画像を提示した.よって,このような病変に対しては,使用するスコープがECであっても,最大倍率で診断を行うのではなく,白色光観察,ME-NBIと同程度の拡大(拡大ズームレバーを中間程度まで押し下げる)でNBI観察を行い(Figure 7),総合的に診断することが望ましい.

非癌と誤診された癌部6病変のEndocytoscopy with narrow band imaging.
a-fはいずれも癌部の画像であるが,Microvascular patternとして,irregularを認めず,非癌と診断された(Horiuchi Y, et al. 12)より許可を得て,転載).

被写体に対する同距離での拡大観察像の比較2(オリンパス株式会社より提供).
スコープ先端から被写体までの距離を2mmに設定する場合,GIF-H290Zではレバーを最大まで押し下げて,最大倍率(85倍)の観察が可能となる.GIF-H290ECではレバーを中間まで押し下げることで,GIF-H290Zの最大倍率(85倍)と同等の観察が可能となる.
また,Ⅴ EC-NBIの長所の項で述べたとおり,スコープの先端部径は他の拡大スコープと比較して細いが,それに伴い鉗子チャンネル径が,他の拡大スコープが2.8mmであるのに対して,GIF-H290ECは2.2mmと狭い.これにより,通常の生検鉗子や治療用の処置具が鉗子チャンネルを通過しないため,検査の際には経鼻内視鏡と同様に細径の鉗子などの処置具を用いる必要があることを留意しておく必要がある.
胃癌の診断におけるEC-NBIの手技のコツと有用性について解説した.EC-NBIはシンプルな診断体系で高精度の診断が可能であり,限られた専門施設の内視鏡医だけでなく,多くの内視鏡医にとって有益であると考えられる.長所,短所についても解説したが,短所はいずれも代替手段で解決可能であり,長所は胃癌に対する日常診療において,いずれも有益である.もし,GIF-H290ECを食道の診断にしか使っていない,あるいはご施設の内視鏡倉庫に使われていないGIF-H290ECが眠っている場合は,是非一度胃癌の診断にご使用を考慮いただけると幸いである.本稿により,EC-NBIが日常診療において,少しでも普及するきっかけになることを期待する.
本論文内容に関連する著者の利益相反:堀内裕介(日本学術振興会科研費(21K15962),公益財団法人内視鏡医学研究振興財団 多施設共同研究助成)