日本消化器内視鏡学会雑誌
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手技の解説
上部消化管内視鏡の基本操作技術(動画付き)
宮本 秀一
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電子付録

2024 年 66 巻 11 号 p. 2587-2594

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要旨

初学者が内視鏡の基本操作技術を習得するためには,系統的な指導法が必要である.内視鏡の操作は「前後操作」「アングル操作」「回転操作」の3つに分類される.中でも「アングル操作」と「回転操作」では,左手で内視鏡を操作することが基本となる.そのため,左前腕や左手関節による回転操作や,左手のみで行うアングル操作方法が求められる.また,内視鏡にたわみをつくらず,C字曲線を維持することで回転操作が内視鏡先端に確実に伝わる.本稿では,上部消化管内視鏡の基本操作技術を解説する.

Abstract

A systematic instructional approach is crucial for beginners to develop foundational technical skills in esophagogastroduodenoscopy. The operation of an endoscope involves three types of movements: forward and backward movements, angling, and rotational movements. To effectively control devices such as biopsy forceps with the right hand, proper manipulation of the endoscope with the left hand is essential. Therefore, mastering the rotational movements of the endoscope using the left forearm and wrist, as well as performing angling operations with the left hand alone, is critical. Additionally, it is important to maintain a “C-shaped curve” in the endoscope, avoiding any bends, to ensure that torque is efficiently transmitted to the tip of the endoscope. This report outlines the fundamental technical skills necessary for performing esophagogastroduodenoscopy.

Ⅰ はじめに

内視鏡技術の発展とともに教育方法も検討されてきた 1)~3が,指導内容が具体的に示されているものは少ない.また,基本技術を中心とした内視鏡の初期教育は指導医や施設の指導方法に左右される状況である.そのため施設間での教育レベルの格差が生じていることが推測される.また,初学者にとって何が重要な点であるかを自身で発見することは困難である.そのため,「見学を中心に自分自身で学ぶ」という方法ではなく,初学者が理解できる系統的な指導法が求められている.

内視鏡の持ち方や操作方法といった基本技術は,挿入や観察などの基本的な手技だけでなく,内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)といった内視鏡治療の成否にも大きく影響する.通常,初期教育は上部消化管内視鏡検査の指導から始まることが多いため,本稿では上部消化管内視鏡を効果的に操作するための基本技術について解説する.

Ⅱ 適切な内視鏡の保持姿勢と検査台の調整

米国消化器内視鏡学会は,内視鏡検査や治療による筋骨格系障害(musculoskeletal disorders:MSDs)を避けるためにエルゴノミクスに基づいたモニターの位置や内視鏡の持ち方を推奨している 4.内視鏡を始める前に,毎回必ずモニターの位置と検査台の高さを調整する 5.可動式のモニターがある場合は,体の正面に位置させ,高さは目線の正面から約15〜20度下に画面中央が来るように調整する(Figure 1 6)~8.検査台の高さは,右肘がやや屈曲した負荷の少ない状態の右手と同じ高さに,被験者の口がくるように調整する.術者は,この2点を毎回必ず調整することで,適切な姿勢で内視鏡を行い,自身の体への負担を軽減し,内視鏡を安定して操作できる.

Figure 1 

モニターと検査台の調整.

自身の体の正面に位置させ,高さは目線正面から約15〜20度下に画面中央が位置するように調整する.検査台の高さは右肘がやや屈曲した負荷の少ない状態の右手と同じ高さに被験者の口がくるように調整する.使用機材:mikoto上部消化管内視鏡モデル(株式会社R0,鳥取).

Ⅲ 正しい内視鏡の持ち方

適切な内視鏡の保持姿勢により安定した内視鏡の操作が容易となる.左脇を開くと,体幹から内視鏡操作部を保持する左手が離れてしまい,内視鏡が不安定となるため(Figure 2-a),左脇を閉める必要がある(Figure 2-b).次に,操作部と光源装置をつなぐユニバーサルコードは左前腕の内側に位置させる(Figure 3).内側に位置させることで,内視鏡操作部とユニバーサルコードの重さを左手と左前腕の2カ所で支えることができる.これにより左手の負荷が軽減され,またユニバーサルコードの動きが前腕で抑えられるため,安定した内視鏡操作が可能となる.後述する生検鉗子などのデバイスを左手のみで操作する技術でもこの前腕でユニバーサルコードを支えることが重要となる.

Figure 2 

内視鏡の持ち方.

a:左脇を開いた状態では,体幹から内視鏡操作部を保持する左手が離れてしまい,内視鏡操作が不安定となる.

b:左脇を閉めることで,左手を体幹から近くに維持することができ,内視鏡操作が安定する.

Figure 3 

内視鏡操作部の持ち方.

操作部と光源装置をつなぐユニバーサルコードは左前腕の内側に位置させ,左手で操作部を保持する.これにより,内視鏡操作部とユニバーサルコードの重さを左手(黄色点線円)と左前腕(赤色点線円)の2カ所で支え,左手の負荷が軽減される.また,ユニバーサルコードの動きが前腕で抑えられるため,安定した内視鏡操作が可能となる.

右手は口から15~20cmの場所を,強く握るのではなく,支えるように軽く保持する(Figure 4-a,b 9.操作部のアングルノブ部分については次項で解説するが,吸引ボタンには示指を,送気ボタンには中指を用いることで,吸引と送気ボタンを同時に操作でき,送気・吸引の微調整が可能となる(Figure 5 10

Figure 4 

右手の握り方.

a:右手でしっかりと内視鏡を握ってしまうと,回転動作などが内視鏡先端に伝わらずスムーズな操作ができない.

b:支えるように内視鏡を軽く保持することで,スムーズな内視鏡動作が可能となる.

Figure 5 

吸引・送気ボタンの押さえ方.

示指を吸引ボタンに,中指を送気ボタンに置くことで,吸引送気を同時に使用できる.

Ⅳ 内視鏡の基本操作

内視鏡の基本操作を練習する前に,内視鏡操作のメカニズムを理解することが重要である.内視鏡操作は「前後操作」「アングル操作」「回転操作」の3つの操作に分類される.この3つの操作を効率よく行うための方法をそれぞれ解説する.

(1)前後操作

内視鏡を「押し・引き」することにより直線的な「前後操作」を行える.生検やEMRなどを正確に行うためには細かい前後操作が重要である.このため,右手と被験者の口を同じ高さにすることで,抵抗なく内視鏡を前後に細かく動かすことができる.そのためには,前項で解説した検査台の高さ調整を必ず毎回行う必要がある(Figure 1).

(2)アングル操作

① 基本操作方法

右手でアングルを操作すると,生検鉗子などのデバイスの出し入れの調整を自身でできなくなるため,左手のみで上下・左右の両アングルノブを操作する.左手母指のIP関節を上下アングルに,母指先端を左右アングルに用いることにより,母指1本で両アングルノブを使用することができる(Figure 6-a).上下アングルノブの凹部分ではなく凸部分に母指をあてることで,より正確な操作が可能となる.内視鏡操作部と左手掌に隙間がないように握り,左手関節をやや背屈させることにより母指が左右アングルまで届きやすくなるのがコツである(Figure 6-b)(電子動画 1).

Figure 6 

アングルノブの使い方.

a:上下アングルノブの凸部分に母指のIP関節をあてて上下アングルノブをコントロールする(赤色点線円).左右アングルノブは母指の先端でコントロールする(黄色点線円).

b:手関節をやや背屈させ,手と操作部の間に隙間がないように握ることで,親指先端が左右アングルノブに届く.

電子動画 1

② 上下アングルノブの固定方法

上下アングルノブは,固定レバーを用いて固定することもできるが,左手の中指(Figure 7-a)と環指(Figure 7-b)を用いることで固定することが可能である.中指や環指で上下アングルを固定することで,母指が完全に自由になり.上下アングルを調整しながら,画像撮影や拡大観察などのリモートスイッチボタンや左右アングルの操作を同時に行うことができる.特に,反転操作で胃体部小彎の撮影をする時は,撮影ボタンを母指で押す際に上アングルが解除されて画面が動いてしまうが,中指または環指で上アングルを固定することで内視鏡画面を固定したまま母指で撮影ボタンを押すことが可能である.中指・環指でアングル操作を補助することにより,円滑な操作が可能となる(電子動画 1).

Figure 7 

中指・環指による上下アングルノブの固定.

a:上アングルを環指で固定した状態.

b:下アングルを中指で固定した状態.

(3)回転操作

「右手の捻り(回内・回外)」「左前腕の屈曲・伸展」「左手関節の屈曲・背屈」の3つの操作で内視鏡を回転させることができる.しかし,右手を回内・回外させることで内視鏡を容易に回転させることはできるが,生検鉗子などのデバイスを右手でコントロールできなくなるため,基本的に右手の捻りは用いない.そのかわりに,次の左前腕または左手関節の動きで内視鏡を回転させる(電子動画 2).

電子動画 2

① 「左前腕の屈曲・伸展」

左前腕を屈曲・伸展することで内視鏡を大きく回転させることができる(Figure 8).これは胃内通過時の軸あわせ(大彎を画面12時から6時方向にあわせる)や,十二指腸下行部挿入,胃内反転観察などの上部消化管内視鏡検査時に必要となる重要な技術である.内視鏡が反転した状態で左前腕を屈曲(自身から見て時計方向)すると胃内後壁に,左前腕を伸展(半時計方向)すると胃内前壁方向に内視鏡先端が回転する.

Figure 8 

左前腕による内視鏡の回転.

左腕を伸展(半時計方向に回す)や屈曲(時計方向に回す)することで,内視鏡先端が回転する.右手と患者の口の間の内視鏡にたわみがない状態を維持しながら回転させる.

② 「左手関節の屈曲・背屈」

左前腕同様に左手関節を屈曲・背屈することで内視鏡を回転させる.反転した状態で左手関節を屈曲すると胃内後壁に,背屈すると胃内前壁方向に内視鏡が回転する.左前腕による回転と違い,左手関節動作は内視鏡先端の回転が小さく,生検やEMR,ESDなどの処置中の微調整に適している.

Ⅴ 効果的に内視鏡を回転させるコツ:C字曲線

内視鏡を効果的に回転させるためには,左手・腕の動きによる内視鏡を回転させる力(トルク)を内視鏡先端に無駄なく伝える必要がある 11.そのためには,左手と患者の口の間の内視鏡にたわみがない状態,すなわち「C字曲線」を維持することが重要である(Figure 9).胃内の内視鏡の形だけでなく,患者の体外における内視鏡の形も意識することが重要である.「C字曲線」を維持するコツは,左手関節の曲げ方にある.左手関節を屈曲させないニュートラルの場合(Figure 9-a)と,左手関節を尺屈(前下方に屈曲)した場合(Figure 9-b)は,内視鏡の形が「C字曲線」となり,効果的に内視鏡を回転させることができる.しかし,左手関節を橈屈(上方向に屈曲)させた場合(Figure 9-c)は,内視鏡にたわみが発生し「C字曲線」が失われてしまう.この状態では,左手や前腕からの力が内視鏡先端に伝わらず,腕や手関節を動かしても内視鏡先端が回転しない.常に「C字曲線」を維持できているかを確認することが極めて重要である(電子動画 2).

Figure 9 

C字曲線の維持方法.

a:左手関節を曲げない状態(ニュートラル)では内視鏡の形がC字曲線となり,内視鏡先端にトルクが伝わる.

b:左手関節を尺屈(前下方に屈曲)した状態.C字曲線が維持されている.

c:左手関節を橈屈(上方向に屈曲)した状態.内視鏡にたわみが発生し,C字曲線が失われ,内視鏡先端にトルクが伝わらない.

Ⅵ デバイスを自身で操作するための技術

生検鉗子などのデバイスを自身で操作することで,より正確な手技を行うことが可能となる.右手をスコープから離しても視野が安定している場合には,右手でデバイスを操作できるが,右手を離すことができない場合は以下の2つの方法が有用である 12

① 右手法:右手の中指と環指で内視鏡を保持し,左手(内視鏡操作部)を右手に近づけることで,右手で内視鏡を保持したままデバイスを操作できる(Figure 10).しかし,左手を伸ばすことで体幹から左手が遠くなり,長時間の処置では術者の体に負担がかかり,内視鏡も不安定となるため,短時間での使用が推奨される.

Figure 10 

デバイスを自身でコントロールする方法(右手法).

右手の中指と環指で内視鏡を保持し,左手を右手に近づけることで,デバイスを右手で操作できる.

② 左手法:左手関節を前下方に屈曲(尺屈)させ,内視鏡を腹部に押しあて,ユニバーサルコードを左前腕の内側におくことで,腹部と左前腕の2カ所でスコープを支えることができる.これにより,左手を操作部から外しても内視鏡は安定し,左手でデバイスを操作することが可能となる(Figure 11 12),13

Figure 11 

デバイスを自身で操作する方法(左手法).

腹部(赤色点線円)と左前腕の支え(黄色点線円)により内視鏡が安定し,内視鏡操作部を内視鏡を安定させる.内視鏡操作部から離した左手でデバイスを操作する.

さらに,生検鉗子などデバイスを内視鏡に挿入する際,画面が揺れて不安定になることがあるが,左手関節を前下方に屈曲(尺屈)し,内視鏡を腹部に押しあてることで,デバイス挿入中も内視鏡画面を安定させ,視野を維持できる.

Ⅶ おわりに

本稿では,上部消化管内視鏡の基本操作技術について解説した.内視鏡の正しい持ち方と各操作法を正しく理解し,系統的に学ぶことで,基本操作技術を確実に習得することが可能である.また,基本技術の習得は,内視鏡検査および治療技術の向上において極めて重要である.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:宮本秀一(株式会社R0)

補足資料

電子動画 1 アングルの操作方法.

母指の第一関節(IP関節)で上下アングルノブを,母指の先端で左右アングルを操作する.中指,または環指で上下アングルノブを固定することで内視鏡画面を動かさずに左右アングルの操作や,撮影ボタンの使用が可能となる.反転操作での胃体部小彎の撮影時には,中指または環指で上アングルを固定することで内視鏡画面を固定したまま母指で撮影ボタンを押すことができる.

電子動画 2 内視鏡の回転方法とC字曲線.

左前腕や左手関節の動きで内視鏡先端を回転させることができる.内視鏡操作部から患者の口までの間の内視鏡にたわみをつくらずに,「C字曲線」を維持することで効率よく内視鏡を回転させることができるが,左手関節を橈屈させてしまうとC字曲線が失われ内視鏡先端にトルクが伝わらない.

文 献
 
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