抄録
剖検標本手術標本を用い大腸粘膜微細模様の基礎的検討を行い,X線検査,内視鏡検査および直視下生検により,微細模様像の臨床診断的意義について検討した. 大腸粘膜の肉眼的微細模様は有溝型,部分的有溝型,無溝型に分類可能で,その出現頻度は手術例では89%が有溝型,部分的有溝型7%,無溝型4%であったが,剖検例では84%が無溝型であった. 粘膜の高さが500μ以上であれば肉眼的に溝を認め,500μ以下に萎縮すると溝は消失する.又萎縮傾向を認めるものに炎症所見を認めた. 大腸粘膜微細模様の描出能はX線検査では75%,通常内視鏡検査では51%,色素内視鏡検査では100%であった. 生検所見を点数評価基準によって整理し,正常型,中間型,炎症型の3型に分類した.生検正常型の71%はX線的にも正常と判定できたが,生検炎症型の64%しか異常を指摘できなかった.一方色素内視鏡検査では生検正常型の83%に正常模様を認め,炎症型の93%に異常を認め,粘膜様像を十分現し組織学的変化を示現できた.