抄録
笑気の鎮瀞,鎮痛作用は,検査や治療の分野で広く応用されてきた.笑気と酸素の混合ガスは1961年に英国で開発され,消化器内視鏡検査には1971年Bennettらにより導入された.内視鏡検査の際,被検者の不安感を除去し,また疼痛を緩和する目的で用いられるわけだが,現在までに諸家による使用報告は比較的良好な成績を得ているようである.今回特に下部消化管内視鏡検査に対し,笑気酸素混合ガスの吸入を行い,前処置あるいは術中処置として実施を試みた.被検者に多大なる苦痛を余儀無くさせる大腸ファイバースコープ検査を受け易くする事,また検者の操作をより円滑になされるようにするため吸入法を利用した.実施にあたり全国10カ所の医療施設に依頼し,共通の問診,有効性,副作用の判定を設定し統計処理を行った.未吸入群65例,吸入群100例について比較検討し,長所並びに欠点等いささかの知見を得たので報告する.